僕の瞳には映らない「作戦」







ティエリアは携帯を身につけていた。
ニールが何度ならしても、携帯には誰も出ない。
やがて、ニールの家にマリアが帰ってきた。
「マリア!?ティエリアはどうした!?」
「クゥーン」
ペロペロと、ニールの手を舐めるマリア。
「くそ!」
ニールは、念のためにティエリアの家の自宅に電話をかけるが、帰ってきていないとの答えだった。
そのまま、着替えて車を回し、ティエリアの自宅でティエリアの祖父に事情を説明する。
「ティエリアが!」
祖父は青ざめていた。
いつもティエリアの身を守っていたボディーガードが、暇を言い渡されて帰ってきていたのが余計に響いた。
そのまま、ストラトス家、アーデ家の人間がティエリアの行方を捜す。
「この産婦人科に、最後に立ち寄ったようです」
雇われていた探偵事務所の人間が、最後の証言を頼りにティエリアが最後に立ち寄った場所である産婦人科に来ていた。
そのまま、証言でヒリング・ケアと会っていたことも判明する。
「ヒリング・ケアか!」
ニールが気色ばむ。
ヒリング・ケアとの婚約はちゃんと破棄した。ケア家の両親も納得してくれた。
ヒリング・ケアは最後まで別れないと泣き叫んでいた。彼女の犯行だろうか。
警察はまだ動いてはいない。
できるだけ、穏便にことを済ませたかった。

やがて、帰宅したヒリング・ケアに、ニールが詰め寄った。
「ティエリアをどこにやった!」
「あーん?ティエリアー?さぁ、そんな奴知らない」
探偵たちが、証言をえているとの証拠をつきつける。
ヒリング・ケアの顔色が変わった。
「ほんとに知らないったら!確かに産婦人科には行ったわよ!お腹の子供をあなたの子供だっていったら、泣きながら飛び出していちゃった」
「お前!」
ニールは、なんとかヒリング・ケアをぶつのを自重する。
「ふん。私を勝手にふるあなたが悪いんだから!」
ケア家の母親が、そんなヒリングの頬をぶった。
「何するのよ、ママ!」
「お前は、自分がなんてことをしているのか分かっているのですか!ティエリアさんにもしものことがあったら、全部お前の責任ですよ!」
「知らないわよ、そんなの!!」
「お黙りなさい!」
ヒリングの父親が、やってきたアーデ家の当主イオリア・シュヘンベルグに土下座をした。
「なんといえばいいのか!今回は私どもの娘のせいで!!」
「それよりも、ケア家も人をかしてほしい。孫娘を探すためには、人手が必要だ。目の見えないあの子のことだ、そう遠くへは行っていないはずだ」
「勿論心から協力いたします!」
「警察には届けたくない。あの子は、警察が大嫌いなんだ」
こうして、アーデ家、ストラトス家、ケア家という三大富豪の人間が揃ってティエリアを探すこととなった。

「クゥーン」
「ちゃんと、探し出してみせるから、元気だせ、マリア」
「ワン」
自分に言い聞かせるように、ニールはマリアの頭を撫でた。
そして、何十回目かも分からないが、携帯に電話をかける。
「はい・・・・」
「ティエリア!?」
応答があった。
だが、それはティエリアの声ではなく、男の声だった。
「ああ、ティエリアの彼氏か。ふーん。さて、ティエリアはどこにいるでしょう?」
「てめぇ、ふざけるな!!」
すぐに探偵チームが呼ばれた。
携帯に酷いノイズがまじりだした。
「ち、ガガガガ・・・使えねぇ・・・ガガガガピー、ガガガガ」
携帯がきられる。
「もしもし!?おい、おい!!」
「落ち着いて下さい」
探偵の一人が沈着冷静な声を出す。
「アーデ嬢の携帯には、探知機が念のためしかけられています。時間がかかりましたが、場所が特定されました」
「ほんとか!」

「それが・・・まずいことに、アルマーク家の敷地内です。これは、警察に任せるしかないでしょう」
「だめだ!あの子は、警察と接触すると発作を起すんだ!以前、それで一回意識不明になった!」
イオリアが首を振る。
それに、探偵チームのものたちが難しい顔になった。
「では、ボディーガードたちに命じて、力ずくで奪い返すしかありませんね」
「仕方ありません。アルマーク家の警備は強固ですが、事情を説明した上で協力してもらうしかありませんね」
「アルマーク家の嫡子、リボンズの単独行動だと思われます。今までにも、元婚約者を拉致監禁したり、暴力を振るったりして訴えられたことが何度かあります」
「アルマーク家と接触できるか?」
イオリアが問う。
「はい。イオリア様」
執事が答える。
「アルマーク家の両親を呼び出せ。リボンズもバカではない。アーデ家ほどの家柄の者に、傷をつけるような行動をすれば、金で解決できないことくらい分かっているだろう」
アルマーク家の両親は、国内の別の場所にいたところを呼び出され、イオリアに土下座した。
「今回は、私どもの息子が・・・・なんといえばいいのか」
アーデ家に逆らえば、たとえ名門であるアルマーク家さえ潰されかねない。
イオリアは、それだけ冷酷な人間だった。
「ごたくは後で聞こうか。ティエリアが監禁されている場所のガードマンを今すぐ解雇してくれ」
ニールが土下座を繰り返すアルマーク家の両親に言い放つ。
「今すぐににでも!」
「こちら側のガードマンは念のために防弾チョッキを着用しろ!銃を忘れるな!アーデ嬢の救出にあたる!」
「俺もいく」
ニールが、ガードマンの一人から防弾チョッキをかりて着用する。
「危険だ」
イオリアが言うが、ニールは首を振った。
「大切な人、一人救えなくて、どうしろってんだ」
「ガードマンへ通達する。ストラトス家の長子も行動を共にすることとなった。くれぐれも、彼の命も守ってくれ!」
「ありがとう、イオリアさん」
「孫娘を、どうか無事に助けてやってくれ」
そこで、イオリアはくず折れた。
「いかん、心臓の発作だ!」
すぐに医師が呼ばれ、イオリアは病院に担ぎ込まれていった。

「絶対に、守ってみせる」
拳銃のセイフティロックを解除して、ニールはエメラルドの瞳を強く輝かせた。

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