「ただいま、マザー、ファザー」 「おかえりー」 「おかえり」 マリアがスクールから帰ってくると、ティエリアとニールが出迎えた。 ニールの仕事はパソコンをメインとした自宅でする仕事で、同じくティエリアもプログラミングをメインとした自宅でできた仕事をしているので、仕事で家をあけるということはまずなかった。 「おやつできてるぞ」 「わーい」 「ちゃんと手を洗うんだよ、マリア」 ティエリアがパソコンにプログラミングをしながら、マリアに促す。 「分かってるよ、マザー」 そのまま、マリアはニールが作ってくれた手作りのドーナツを一人で全部食べてしまった。 結構の量があったのに。 ニールは笑っていた。 「マリアは食いしん坊だな」 「だって、ファザーのお菓子すごいおいしいんだもの。マリア大好き!」 「明日はクッキーでも焼いてやるよ」 「わーい」 ニールは主夫であった。家事の大半をニールがこなす。 かわりに、ティエリアがニールの分まで仕事をする。 雑誌への執筆依頼もちょくちょくくるし、IQ180をこえるティエリアは仕事に困ったことはまずない。 小説もいくつか書いて出版しており、わりと売れていた。 ただ、学会に論文を発表するとかそういうことはせずに、難しいプログラミングをメインに生計をたてていた。 貧しくもなければ、特に金持ちというわけでもない、ありふれた家庭。 それで、ニールもティエリアも満足だった。 無駄に仕事に時間を費やして、家族の時間を割きたくはない。 「愛しているよ、ティエリア」 「愛しています、ニール」 今日も、二人は愛をささやく。 二人の手には、結婚指輪がきらりと輝いていた。 「マザー、マリア、友達のところにいってくるね」 「気をつけていってくるんだよ」 ティエリアが、マリアにマフラーを首に巻きつける。 「外は寒いだろうから」 「ありがとう、マザー!」 そのまま、飛び出していったわが子の、あまりの元気さに苦笑する。 「マリアは、少しおしとやかにしたほうがいいかな?」 「いや、今のままでいいだろ」 ニールに抱き寄せられる。 「そうですね。自然のままが、一番いいですね」 暖かなニールの体温。 イノベーターであるティエリアの体温は普通の人間よりも低い。 そのまま、二人はベッドに向かった。 仕事もひと段落ついたので、午後の休憩である。 「世界中の誰よりも、あなたを愛しています、ニール」 「世界中の誰よりも、お前を愛している、ティエリア」 二人は、互いを抱きしめあって、何度も口付けを交わす。 そのまま、抱きしめあって軽く仮眠をとる。 帰ってきたマリアが見たものは、仲良く互いを抱きしめあって穏やかな顔で眠っているニールとティエリアであった。 マリアは、もそもそとそのベッドに忍び込む。 「にひひひひ」 にっこりと、天使のように微笑んで、開いたスペースで、マリアも眠った。 猫のティアも、ベッドの上で丸くなる。 「マリア、とっても幸せ」 満足そうに呟いて、まどろむ。 こんなにも幸せ。 マリアの家族のファザーとマザーはいつも仲がいい。 ケンカをした場面なんて一度も見たことがない。 ファザーとマザーはいつもラブラブ。 見ているマリアも幸せになる。 世界の誰よりも、ファザーとマザーの子供として生れてこれたことがマリアの幸せ。 「ん・・・・」 起きたニールに、つられてティエリアも瞼を開ける。 「どうしました?」 「静かに」 「ああ、マリア・・・・幸せそうな顔」 クスリと、ティエリアが氷の結晶のような微笑を零す。 「俺も幸せだぜ?」 髪を撫でられて、ティエリアは手を伸ばす。 「僕も、幸せです。ずっとこのままでいたい」 「いれるさ。ずっと、このままだ」 「そうですね」 二人は、また口付けを交わすのであった。 NEXT |