ドン! 出された夕食に、ティエリアが悲鳴をあげてロックオンに抱きついた。 「え、海老が、い、生きて動いてる!!」 伊勢海老の生け作りに、ティエリアが怯えた表情を見せた。 「あー、これはそういう料理なんだよ」 ロックオンが、ティエリアの頭を撫でる。 「かわいそうだけど、この国の料理だから」 アレルヤも、少し引いている様子だった。 刹那はすでに箸をもって、伊勢海老のみを食べだした。 ロックオンと、アレルヤも箸を伸ばす。 まだ生きている伊勢海老。 「ティエリア、どうしたんだ、食べないのか?」 ロックオンが振り返ると、ティエリアは手に短剣を持っていた。 「おい!」 ロックオンが驚くが、ティエリアは止まらない。 そのまま、伊勢海老の頭に、ダン!と短剣を突き刺し、完全に息の根を止めた。 「こんな残酷な料理、僕は食べたくありません。海老だって生きています。調理して死んでしまうなら仕方ないですが、こんな方法で生かすなんて残酷すぎる」 ティエリアは泣いていた。 「ごめん。俺がこの料理頼んだんだ。悪かった」 ティエリアの涙を拭う。 「ごめんなさい、海老さん」 ティエリアもやがて落ち着いた。 息の根を止めた海老の料理を、残さないようにとアレルヤ、刹那、ロックオンが箸を伸ばす。 残してしまっては、こんな残酷な料理にされてしまった伊勢海老に申し訳ない。 だが、ティエリアは言い放ったとおり、食べようとはしなかった。 「ごめんな。俺が悪かった。泣かないでくれ」 「いいえ、あなたが悪いのでありません。この国の伝統料理の文化が悪いでもありません。誰も悪くない。分かっているんです。でも、残酷すぎて受け入れられません」 ティエリアは、身のなくなった海老を両手で大事に乗せると、庭にでた。 「どうするんだ?」 「うめるんです」 そのまま、やわらかい土を発見し、小さな穴をあけるとそこに伊勢海老を埋めた。 足とかひげが飛び出ているが、気にしない。 「海老さん、海老さん、今度あう時は海老さんではなくオキアミかミジンコにでもなってください」 それ、かなり退化してないか? しかも、オキアミかミジンコは魚の餌だろう。 人間と会うことなんてまずないんじゃないのか。 三人はそんなことを思ったが、命を大事にするティエリアの行動には胸にくるものがあった。 ティエリアは、パンパンと手を叩いて、埋めた伊勢海老に手をあわす。 「南無阿弥陀仏」 どこで覚えたのかも分からない言葉を口にする。 ついつい、刹那もアレルヤもロックオンも、伊勢海老の墓の前にきて手を合わせて南無阿弥陀仏というのであった。 それを、最初の料理である伊勢海老の生け作りを下げにきたホテル従業員が、頬を引きつらせて見ているのであった。 NEXT |