草津の湯4







次々に運ばれる料理。
ティエリアは、そのどれも食べようとしない。
「どうした、食欲ないのか?」
「僕は、生の魚はだめなんです」
ティエリアは、洋食派だった。
「あちゃー。刺身がメインだもんなぁ」
ロックオンは、テーブルに並べられた料理を見つめる。
それから、ティエリアを見つめる。
アレルヤと刹那は、問題ないようで次々と食べていく。
一人、食べることのできないティエリア。
生の魚がだめというのは初めて知った。知っていれば、違う料理を注文していた。
ロックオンは、レストランに内部電話をいれて、洋食を一人前頼んだ。
しばらくして、洋食が運ばれてくる。
「これなら、食えるだろ?」
ロックオンが、ティエリアの頭を撫でる。
「迷惑をかけてしまってすみません」
「いいってことよ。生の魚は、だめな場合はどうしようもないしな」
ロックオンも、無理にティエリアに食べさそうとすることはなかった。
持ってこられた料理は、シーフードパスタとサラダ、それにスープだった。
肉料理の嫌いなティエリアでも食べれるように、あえてシーフードにした。肉が嫌いだといっても、焼肉やステーキが嫌いなだけで、普通に料理された肉は食べる。
「迷惑なんかじゃないから、元気だせ、な?」
「はい」
ティエリアはフォークで綺麗にパスタを食べていく。
量は多くはなかったが、食の細いティエリアは残してしまった。その残りを、ロックオンがいつものように食べていく。
ティエリアは、パスタを一口分にまとめると、ロックオンに食べさせた。
「美味しいですか?」
「ああ、美味いよ」

それを、アレルヤと刹那は、口から醤油を滴らせながら見つめていた。
このバカップルは、アレルヤと刹那の存在を完璧に忘れていた。

ティエリアは、サラダを食べる。
「おいおい、無理しなくていいぞ」
「大丈夫です」
「サラダさん、次にあったときは、どうか葉緑体にでもなっていてください」
食べながら、そんな言葉をティエリアは口にする。
植物から思いっきり退化しとるがな!
さっきの海老からオキアミかミジンコといい、何故に退化するかな?
そもそも、サラダに命はないのだから(植物に命はあるが)、サラダさんという言葉自体おかしい。
ロックオンは、くくっと笑うと、ティエリアの頭をしきりに撫でるのだった。
かわいい。
本当に、なんてかわいいんだろう。

そんな様子を、アレルヤと刹那は、口の端からお酢を滴らせながら見ていた。
このバカップルは、本当に。
誰か、どうにかしてください。


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