草津の湯5







布団が4組敷かれた。
まだ寝るには早いので、アレルヤと刹那はTVを見ていた。
ロックオンとティエリアは、二人揃って庭の日本庭園に出て、置かれていた椅子に腰掛ける。
「月が、綺麗ですね」
「ああ、そうだな」
澄みきった空に浮かぶ、新円を描く月は、優しく銀色の光を地上に降らす。
リーンリーン。
虫の声が、耳に心地よい。
ヒュルルルル、パァン!
パァン!
空に打ち上げられる花火を見上げる。
地元は夏祭りだそうで、店もいろいろと出ているだろうが、祭りを楽しみにやってきたわけではない。
あくまでも、温泉を楽しみにやってきたのだ。
ティエリアが、花火をじっと見上げていた。
日本の花火は古く、伝統もある。
綺麗な色に燃え上がる。
そして、すぐに咲いては消えてしまう。
花の火。
すぐに花を咲かせては消えてしまうから、花火。
ロックオンが、自分の着ていた上着を脱いで、ティエリアに羽織らせた。
「どうしました?」
「風邪、ひかないようにって」
「僕は病気になりにくくできています」
「それでも、念には念だ」
パァン。
パァン。ヒュルルル〜。
打ちあがっていく花火を二人で見上げる。
満月だけでも十分に綺麗なのに、花火まで見れるなんてついている。
位置している日本庭園は、ちょうどよく花火が見れる位置にあった。運がいい。
緑色の花火があがったとき、ティエリアが石榴色の目を瞬かせた。
「あなたの瞳の色だ」
紅い花火が上がった時、ロックオンがティエリアを抱き寄せる。
「ティエリアの瞳の色だ」
花火を背景に、虫の鳴き声を耳にしながら、二人はそっと唇を重ねる。
「地上は大嫌いですが、あなたといる地上は悪くありません」
ロックオンが、ティエリアの頭を撫でる。
「ずっと、あなたとこうしていたい」
「俺もだ」

花火に気づいて、日本庭園側にきていたアレルヤと刹那は、二人の会話をずっと聞いていた。
そして、アレルヤは飲んでいたコーラをボトボトと床に垂らしていた。
あの、君たち、僕たちの存在完全に忘れてない?
刹那は、花火を見上げてから、隣のアレルヤからコーラを奪い、ラッパのみをはじめるのであった。
この二人には、何をいっても通じないだろうと。

「あー、早く帰りたい」
ぼそりと、刹那は呟くのであった。




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