布団が4組敷かれた。 まだ寝るには早いので、アレルヤと刹那はTVを見ていた。 ロックオンとティエリアは、二人揃って庭の日本庭園に出て、置かれていた椅子に腰掛ける。 「月が、綺麗ですね」 「ああ、そうだな」 澄みきった空に浮かぶ、新円を描く月は、優しく銀色の光を地上に降らす。 リーンリーン。 虫の声が、耳に心地よい。 ヒュルルルル、パァン! パァン! 空に打ち上げられる花火を見上げる。 地元は夏祭りだそうで、店もいろいろと出ているだろうが、祭りを楽しみにやってきたわけではない。 あくまでも、温泉を楽しみにやってきたのだ。 ティエリアが、花火をじっと見上げていた。 日本の花火は古く、伝統もある。 綺麗な色に燃え上がる。 そして、すぐに咲いては消えてしまう。 花の火。 すぐに花を咲かせては消えてしまうから、花火。 ロックオンが、自分の着ていた上着を脱いで、ティエリアに羽織らせた。 「どうしました?」 「風邪、ひかないようにって」 「僕は病気になりにくくできています」 「それでも、念には念だ」 パァン。 パァン。ヒュルルル〜。 打ちあがっていく花火を二人で見上げる。 満月だけでも十分に綺麗なのに、花火まで見れるなんてついている。 位置している日本庭園は、ちょうどよく花火が見れる位置にあった。運がいい。 緑色の花火があがったとき、ティエリアが石榴色の目を瞬かせた。 「あなたの瞳の色だ」 紅い花火が上がった時、ロックオンがティエリアを抱き寄せる。 「ティエリアの瞳の色だ」 花火を背景に、虫の鳴き声を耳にしながら、二人はそっと唇を重ねる。 「地上は大嫌いですが、あなたといる地上は悪くありません」 ロックオンが、ティエリアの頭を撫でる。 「ずっと、あなたとこうしていたい」 「俺もだ」 花火に気づいて、日本庭園側にきていたアレルヤと刹那は、二人の会話をずっと聞いていた。 そして、アレルヤは飲んでいたコーラをボトボトと床に垂らしていた。 あの、君たち、僕たちの存在完全に忘れてない? 刹那は、花火を見上げてから、隣のアレルヤからコーラを奪い、ラッパのみをはじめるのであった。 この二人には、何をいっても通じないだろうと。 「あー、早く帰りたい」 ぼそりと、刹那は呟くのであった。 NEXT |