草津の湯6







「とりゃぁ!」
ロックオンが投げた枕を、しっかりと刹那が受け止める。
「負けるかっ」
刹那が、思い切り枕を投げる。
ボスっ。
それを、顔面で受け止めるアレルヤ。
アレルヤも枕を投げる。
刹那はそれを受け止めて、アレルヤに投げ返した。
ボスッ。
また、アレルヤは顔で受け止めた。
四つの枕では足りずに、押入れにあった枕を5つほど取り出しての、入り乱れの枕の投げ合いだ。
「枕さん、ごめんなさい。今度生まれ変わった時は、糸くずにでもなってください」
真剣な表情で、ティエリアが投げられて放置されたままの枕に謝って、南無阿弥陀仏と唱える。
枕に命なんてないのに。
とりあえず、かわいいので三人ともそのままにしておいた。
ティエリアが、放置されたままだった枕を手に、空を切る。
思い切り投げる。
ボスっ!
刹那がかわしきれずに、顔で受け止める。
「ティエリア・アーデ、覚悟!!」
刹那が、とりゃあと思い切り枕を二つ投げた。
それをティエリアは人をこえた動体視力で見極め、俊敏な動きでかわす。
ボスッ、ボスッ!
枕は二つとも、アレルヤの顔に当たった。
「なんで僕ばっかり!」
アレルヤは近くにあった枕を投げまくる。
その一つが、ロックオンの頭に当たった。
「やるな、この!」
押入れから新しい枕を追加して、投げては受け止め、投げては受け止め。
ティエリアは素晴らしい動きで、全て交わすか受け止める。
動体視力は半端ではない。
刹那が、アレルヤが、ティエリアが、ロックオンに向けて一斉に枕を投げた。
「ぎゃあああああああああ!!!」
次々と命中。
刹那が投げた枕の中には、辞書が入っていた。
それをもろに後頭部に受けて、ロックオンは沈没する。
「ふふふ、ロックオン破れたり」
ガッツポーズをとる刹那。
「勝負!」
「のぞむところだ!」
「決着を!」
アレルヤとティエリアと刹那が、それぞれを枕をもって、じりじりと間合いを縮める。
次の集中攻撃はティエリアにいった。
10をこえる枕を、ティエリアは俊敏な動きでかわし、そして受け止める。
そのとき、布団に足をとられてしまい、ティエリアの体がよろめいた。
「チャンスだ!」
刹那が、枕を投げる。
ティエリアは、畳に片手をつくと、ざっと数歩分後ろに跳び退った。
枕は、ロックオンにトドメをさすように当たっていく。
刹那も、アレルヤも、ティエリアの機敏な動きと豹のようなしなやかさに目を奪われる。
少女のように、乙女のようにかわいらしいのに、時には誰よりも漢らしく、そしてかっこいい。
刹那とティエリアの手から枕が投げられ、アレルヤは全て顔で受け止めて、撃沈した。
刹那とティエリアは顔を見合わせ、熱い握手を交わす。
凄まじい戦いだった。そのまま、ロックオンとアレルヤの敗者の姿を、ポラロイドカメラでとる。
「こらぁあああ!!」
撃沈していたロックオンが、起き上がる。
「刹那、ティエリア!」
二人とも、首根っこを掴まれた。
刹那には拳骨が、ティエリアにはデコピンが。
二人は、それぞれ頭とオデコをおさえながらも、楽しそうに笑い声をあげるのあった。
アレルヤは、枕に埋没している。

こうして、楽しい夜は更けていく。


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