草津の湯8







珍しく、朝に弱いティエリアがおきだした。
そのまま、温泉にはいりたいというので、ロックオンも一緒にいく形となった。
誰もおらず、がらんとした温泉を楽しむ。
「昨日は、よく眠れましたか?」
「ああ、ティエリアのお陰でよく眠れたよ」
「それは何よりです」
花も恥らうような大輪の笑みは、可憐すぎて。
ティエリアは、朝起きると、伊勢海老さんの墓に花を供えて、南無阿弥陀仏ではなくアーメンと十字を切った。
夢の中で、伊勢海老さんが出てきたのだ。
言葉をしゃべってくれた。
苦痛から解放してくれてありがとうと。
今度生まれ変わって会う時は、ミジンコかオキアミは悲しいので、食べれることのない海鳥にでも生まれ変わります。
そう、伊勢海老さんは約束してくれた。
伊勢海老さんと握手もした。
ティエリアは満足だった。
だから、珍しく朝も気分よく早くに目覚めれたのだ。
「いいお湯だなー」
「そうですね」
のんびりと、ロックオンと二人きりで温泉を楽しむ。
貸切だ。
「ティエリア、機嫌がいいな。何かいいことでもあったのか?」
「秘密です」
にっこり。
僕と、伊勢海老さんだけの秘密です。
「ティエリア、背中洗ってやるよ」
「本当ですか?」
パラリと、巻いていたバスタオルをすぐに外す。
「ティエリア。もうちょっと、危機感ってものをもったほうがいいぞ」
脱ぎっぷりのよさに、ロックオンが苦笑する。
「だって、僕の裸なんてどこも魅力的じゃないですもの」
「そんなことないさ」
ロックオンが、ティエリアの背中を洗い出す。
「ロックオンは巨乳が好きだって」
「まぁ、昔はな」
「僕は巨乳じゃありません。胸なんてツルペタだ」
「そこがかわいいんだろう?」
「かわいいんですか?」
ティエリアが、石榴の瞳を瞬かせる。
未成熟な少女のような体は、ロックオンは嫌いではない。
確かに、女性として魅力的な体も好きだが、誰でもないティエリアであれば、胸のあるなしに関わらずに好きだし、性別さえもこえている。ティエリアは無性であって、女性ではない。
男性として自我をもっているし、データ上も男性とされているので、女性というよりは男性、というほうが正しいのかもしれないが、ロックオンに恋したティエリアは女性化が進み、その精神すら女性化が進んでいる。
肉体的も女性、というわけではないが、それに近いつくりになっている。
「俺は、ティエリアだから好きなんだよ」
背中を洗い流して、また温泉に浸かる。
「僕も、ロックオン、あなたがあなたであるから好きです」
二人は湯の中にもぐった。
そのまま、息をとめてキスをする。
ゆらめく湯の中のティエリアは、まるで人魚姫のようだった。
「ぷはっ」
「ぷはーっ」
湯から顔を出した二人に、一人温泉に入りにきたアレルヤは床に滑って、湯の中に落っこちるのであった。
ちなみに、刹那はまだ寝ていた。



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