珍しく、朝に弱いティエリアがおきだした。 そのまま、温泉にはいりたいというので、ロックオンも一緒にいく形となった。 誰もおらず、がらんとした温泉を楽しむ。 「昨日は、よく眠れましたか?」 「ああ、ティエリアのお陰でよく眠れたよ」 「それは何よりです」 花も恥らうような大輪の笑みは、可憐すぎて。 ティエリアは、朝起きると、伊勢海老さんの墓に花を供えて、南無阿弥陀仏ではなくアーメンと十字を切った。 夢の中で、伊勢海老さんが出てきたのだ。 言葉をしゃべってくれた。 苦痛から解放してくれてありがとうと。 今度生まれ変わって会う時は、ミジンコかオキアミは悲しいので、食べれることのない海鳥にでも生まれ変わります。 そう、伊勢海老さんは約束してくれた。 伊勢海老さんと握手もした。 ティエリアは満足だった。 だから、珍しく朝も気分よく早くに目覚めれたのだ。 「いいお湯だなー」 「そうですね」 のんびりと、ロックオンと二人きりで温泉を楽しむ。 貸切だ。 「ティエリア、機嫌がいいな。何かいいことでもあったのか?」 「秘密です」 にっこり。 僕と、伊勢海老さんだけの秘密です。 「ティエリア、背中洗ってやるよ」 「本当ですか?」 パラリと、巻いていたバスタオルをすぐに外す。 「ティエリア。もうちょっと、危機感ってものをもったほうがいいぞ」 脱ぎっぷりのよさに、ロックオンが苦笑する。 「だって、僕の裸なんてどこも魅力的じゃないですもの」 「そんなことないさ」 ロックオンが、ティエリアの背中を洗い出す。 「ロックオンは巨乳が好きだって」 「まぁ、昔はな」 「僕は巨乳じゃありません。胸なんてツルペタだ」 「そこがかわいいんだろう?」 「かわいいんですか?」 ティエリアが、石榴の瞳を瞬かせる。 未成熟な少女のような体は、ロックオンは嫌いではない。 確かに、女性として魅力的な体も好きだが、誰でもないティエリアであれば、胸のあるなしに関わらずに好きだし、性別さえもこえている。ティエリアは無性であって、女性ではない。 男性として自我をもっているし、データ上も男性とされているので、女性というよりは男性、というほうが正しいのかもしれないが、ロックオンに恋したティエリアは女性化が進み、その精神すら女性化が進んでいる。 肉体的も女性、というわけではないが、それに近いつくりになっている。 「俺は、ティエリアだから好きなんだよ」 背中を洗い流して、また温泉に浸かる。 「僕も、ロックオン、あなたがあなたであるから好きです」 二人は湯の中にもぐった。 そのまま、息をとめてキスをする。 ゆらめく湯の中のティエリアは、まるで人魚姫のようだった。 「ぷはっ」 「ぷはーっ」 湯から顔を出した二人に、一人温泉に入りにきたアレルヤは床に滑って、湯の中に落っこちるのであった。 ちなみに、刹那はまだ寝ていた。 NEXT |