アレルヤと刹那が、泳ぎの競争を止めてこちらにやってきた。 「ティエリア・アーデ、やはり俺の予想通り泳げない人間だな」 「失礼な!浮き輪があればちゃんと泳げる!」 「ティエリア、水着かわいい」 「確かにかわいい」 「だろー。俺が前に買ってやったやつだ」 「ティエリアは、頬を紅くしてぷいっと違う方向を向いてしまった。 衣服のまま泳ぐのは問題がある。 だからといって、海パンでは胸が丸見えだ。 別に見えてもいいのだが、ロックオンが怒るので、上に何かを着る必要があった。 そこで思い出したのが、前に買ってもらった水着だった。女の子用だったが、女性化の進んだティエリアの無性の体には問題ないだろう。 ゴシックロリータが入りまくったかわいいデザインであったが、悪くはない。 ティエリアも、自分の胸のなさは気にしていた。女性ではないが、どうせあるならもう少しあってもいいんじゃないかと思う。 ほとんど平らとあまり変わりないではないか。 それなら、ないほうですっきりする。 僅かばかりに膨らんだ、11、12歳の少女のような胸。ミス・スメラギのようなボインになりたいとは思わないが、どうせ胸があって女性化が進んでいるのなら、せめてAカップくらいあっても罰はあたらないのじゃないか。 ちなみにティエリアの胸のサイズはAAだ。 ロックオンが選んでくれた水着は、見事なまでに胸のなさをカバーできていた。 衣服も、少しゴシックロリータが入ったものになると、けっこうそんなものも多い。 ユニセックスな服を好むティエリアであったが、女装ではないので女性の服を着てももう抵抗感はなかった。 「ティエリア、泳ごうか」 「泳ごう」 アレルヤと刹那が手を差し伸べる。 それを、ロックオンが遮る。 「ティエリアは、俺と泳ぐんだ!」 「何それ、独り占めはずるいよ!」 「大人げのない」 「うっせー」 ティエリアは、ぽかんとしていた。 今の自分の水着が、どれほど未熟な少女のラインをもったティエリアに似合っているのか気づいていない。 おまけにピンクの花柄の浮き輪つきとか、もうかわいすぎます。 ロックオンは、こうしてティエリアを連れて、浅い海を存分に泳ぐのだった。 やがて、海からあがって、ロックオンは小さなボートのような形の浮き輪にティエリアを乗せると、遠くまで泳ぎに出た。 珊瑚礁が、海面から見える。 鮮やかな魚の群れ。 ティエリアが笑う。 二人は、そのまま海面で口付ける。 「ありがとう、ロックオン」 「いいってことよ、お姫様」 また、さっきのイルカが近寄ってきた。 ティエリアは歌いだした。イルカがぱしゃんとはねる。 ティエリアの歌声に、海面を泳いでいた熱帯魚が寄ってくる。海鳥も、そして他のイルカも。 嬉しくなって、ティエリアは綺麗な声で歌う。 まるで、人魚姫。 泳ぐことは、少ししかできないけれど。 ロックオンは、ティエリアの歌を聞きながら、ティエリアが溺れることのないように細心の注意を払うのであった。 NEXT |