ロックオンとティエリアは、二人で出かけた。 南の島をぐるりとまわる、小さな散歩旅行だ。 熱帯の島は、いろんな花が咲いていた。 それを、ティエリアが摘み取っていく。 今日のティエリアの格好は、ベージュの薄いTシャツで、裾が短く、臍より上の位地でカットされている。それに、いつもよくはく白い半ズボンに白のニーソ、膝まであるブーツ。ニーソには黒いリボンが編みこまれている。 髪はツインテールに結って、ロックオンがガーネットのついた紅いリボンで結んでくれた。 色とりどりの花を見ながら、ティエリアが零す。 「極彩色ですね」 「まぁ、熱帯の島だからな」 「昨日はジャボテンダーさんのお陰でよく眠れました」 「そうか、よかったな」 緑の森を歩いていく。 手を握り合って、歩いていく。 緑の影が、二人に落ちる。 「新婚旅行には、こんな島にきたいな」 「新婚旅行?誰とですか?」 「ばか、お前に決まってるだろ」 目をぱちくりさせるティエリアが、艶やかに笑う。 「そうですね」 摘み取った極彩色の花を放り投げる。 「おいおい」 ロックオンが、それを拾っていく。 ティエリアは駆け出した。 「ちょっと、ティエリア待てよ!」 花を放置して、追いかける。 ティエリアはロックオンの声を無視して走り出す。 僕は、僕は、僕は。 僕は。 やがて別荘に戻ってきたティエリアは、部屋の中で泣き崩れた。 ロックオンが息を荒くして、戻ってくる。 「どうしたんだ、ティエリア?」 「僕は、人間じゃありません。あなたと結婚なんてできません」 「ティエリアは人間だろう?」 「でも、僕は計画の遂行のために生れてきた人工生命体だ!ロックオンと結婚なんて、無理です」 「どうしてそう決め付けるんだ?」 「だって、ヴェーダが言っていたもの。人間と恋をしても、結婚はできないって」 「ヴェーダはもういないだろう?ヴェーダの言葉に従って終わるのか?」 「嫌です」 泣きながら、首を振る。 「だったら、ヴェーダの言葉なんてもう忘れろ。お前さんには、ちゃんと国籍も与えられていえる。コロニー出身ってことになってるけどな」 「えっ」 ティエリアの石榴の瞳から流れ出していた大粒の涙が止まる。 「国籍があれば、ちゃんとした結婚式をあげられる」 「僕に、国籍が?」 それは、人間として認められた証でもあった。 「ああ、俺がCB研究員に要請して、正式に許可が下りたんだよ。だから心配するな」 「ロックオン!」 ティエリアは泣きじゃくりながら、ロックオンに抱きついた。 「好きです、好きです、大好きです!」 ぎゅうっと抱きつかれて、ロックオンは穏やかな表情を浮かべる。 「いつか結婚しようか?」 「はい」 「愛しています」 「俺も、愛しているよ」 「あなたに出会えて僕は生まれ変わった。僕は人間でいられる」 「それでいいんだ。ずっと俺の傍にいてくれよ?」 「あなたこそ、僕の傍から消えたりしないでください」 じっと見つめあった後、口付ける。 何度も何度も。 そのまま、体を重ねた。 「あ、あああ」 ティエリアの喘ぎ声が聞こえる。 吐息が甘い。 ロックオンは、ティエリアを満たしていく。 二人はシャワーを浴びると、ジャボテンダーの抱き枕を抱きしめながら眠った。 NEXT |