南の島でひゃっほい9







ロックオンとティエリアは、二人で出かけた。
南の島をぐるりとまわる、小さな散歩旅行だ。
熱帯の島は、いろんな花が咲いていた。
それを、ティエリアが摘み取っていく。
今日のティエリアの格好は、ベージュの薄いTシャツで、裾が短く、臍より上の位地でカットされている。それに、いつもよくはく白い半ズボンに白のニーソ、膝まであるブーツ。ニーソには黒いリボンが編みこまれている。
髪はツインテールに結って、ロックオンがガーネットのついた紅いリボンで結んでくれた。
色とりどりの花を見ながら、ティエリアが零す。
「極彩色ですね」
「まぁ、熱帯の島だからな」
「昨日はジャボテンダーさんのお陰でよく眠れました」
「そうか、よかったな」
緑の森を歩いていく。
手を握り合って、歩いていく。
緑の影が、二人に落ちる。
「新婚旅行には、こんな島にきたいな」
「新婚旅行?誰とですか?」
「ばか、お前に決まってるだろ」
目をぱちくりさせるティエリアが、艶やかに笑う。
「そうですね」
摘み取った極彩色の花を放り投げる。
「おいおい」
ロックオンが、それを拾っていく。
ティエリアは駆け出した。
「ちょっと、ティエリア待てよ!」
花を放置して、追いかける。
ティエリアはロックオンの声を無視して走り出す。

僕は、僕は、僕は。

僕は。

やがて別荘に戻ってきたティエリアは、部屋の中で泣き崩れた。
ロックオンが息を荒くして、戻ってくる。
「どうしたんだ、ティエリア?」
「僕は、人間じゃありません。あなたと結婚なんてできません」
「ティエリアは人間だろう?」
「でも、僕は計画の遂行のために生れてきた人工生命体だ!ロックオンと結婚なんて、無理です」
「どうしてそう決め付けるんだ?」
「だって、ヴェーダが言っていたもの。人間と恋をしても、結婚はできないって」
「ヴェーダはもういないだろう?ヴェーダの言葉に従って終わるのか?」
「嫌です」
泣きながら、首を振る。
「だったら、ヴェーダの言葉なんてもう忘れろ。お前さんには、ちゃんと国籍も与えられていえる。コロニー出身ってことになってるけどな」
「えっ」
ティエリアの石榴の瞳から流れ出していた大粒の涙が止まる。
「国籍があれば、ちゃんとした結婚式をあげられる」
「僕に、国籍が?」
それは、人間として認められた証でもあった。
「ああ、俺がCB研究員に要請して、正式に許可が下りたんだよ。だから心配するな」
「ロックオン!」
ティエリアは泣きじゃくりながら、ロックオンに抱きついた。
「好きです、好きです、大好きです!」
ぎゅうっと抱きつかれて、ロックオンは穏やかな表情を浮かべる。
「いつか結婚しようか?」
「はい」
「愛しています」
「俺も、愛しているよ」
「あなたに出会えて僕は生まれ変わった。僕は人間でいられる」
「それでいいんだ。ずっと俺の傍にいてくれよ?」
「あなたこそ、僕の傍から消えたりしないでください」
じっと見つめあった後、口付ける。
何度も何度も。
そのまま、体を重ねた。
「あ、あああ」
ティエリアの喘ぎ声が聞こえる。
吐息が甘い。
ロックオンは、ティエリアを満たしていく。
二人はシャワーを浴びると、ジャボテンダーの抱き枕を抱きしめながら眠った。




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