ラブファントム「氷の翼」







バーチャル装置に、ロックオンと二人で入る。装置を連結させる。
(今日もAIマリアをご利用くださり、ありがとうございます。マスター、おはようございます)
バーチャルエンジェルとなったティエリアが、仮想空間に舞い降りる。
ロックオンも、仮想空間にダイブする。
ティエリアの背中には、六枚の翼があった。AIマリアが、勝手にデータに手を加えてしまったのだ。何度いっても消えないので、そのままにしてある。
「ほんと、天使みたいだよな」
六枚の純白の翼を持ったティエリアは、天使そのものに見える。
ただでさえ中性的な絶対的な美貌を持った存在であるというのに。
仮想空間に舞い降りてしばらくすると、背中の翼は溶けて消えた。
「AIマリア。戦闘フィールド405マップへ転送してくれ」
(了解しました。只今、データをロード中です。しばしお待ち下さい。転送が完了いたしました)
ぱっと、場面が変わる。
トレミーの格納庫であった。
警報が鳴り響く。
二人はノーマルスーツを着ていた。
(敵、機影25のモビルアーマと、母艦戦艦と他、戦艦2。戦闘フィールドは草原です)
「ロックオン・ストラトス、デュナメス、目標を狙い撃つ!」
「ティエリア・アーデ、ヴァーチェ、目標を補足、排除行動に移る!」
それぞれ、ガンダムを発進させる。
ティエリアはGNフィールドをはりながら、GNバズーカのチャージに入る。
敵の攻撃は完全に、GNフィールドで塞がれている。
デュナメスに乗ったロックオンが、次々と敵を撃ち落していく。
「メイチュウ、メイチュウ」
ハロが、合成音声を出す。
「誰が外すかよ!」
「GNバズーカ、フルパワー解放」
ティエリアが、破壊の光を放つ。それは、敵の母艦をも飲み込んで、彼方までを破壊しつくていく。
(敵、残存勢力55%)
「ロックオン・ストラトス。接近戦の訓練に入る。以下、指示に従ってもらう」
「はいよ」
ティエリアからの通信に、ロックオンが頷く。
「粒子ビームサーベルを装填し、敵を切り裂いていってください」
「了解した」
バーチェに乗ったティエリアも、粒子ビームサーベルを両手にガンダムを発進させる。
次々に、敵を切り裂いていく。
(敵、残存勢力30%までに減少。撤退していきます)
「そこまでです」
(フィールドを格納庫に転送します)
ガンダムを収容し、互いにコックピットから降りて、がしっと手を組んだ。
「やるな、お前さんも」
「あなたこそ」
(マスター)
ふいに、ごうっと炎の燃える音がした。
「AIイフリールか。どうした?」
(うふふ。その人、マスターの彼氏?)
燃える六枚の翼を持った少女が姿を現す。獄炎天使イフリール。バーチャル装置に備わった、AIマリアと同じAIだ。主にハッキングの監視や、ウィルスを焼き尽くすといった攻撃型防御システムを備えたAIであるが、仮想空間を自由に翔けて、神出鬼没である時がおおい。
マスターとして登録されているティエリアが声をかけなければ、まずは姿を現さないのに珍しいこともあるものだ。
(ねぇ、マスターの彼氏でしょ。かっこいいね)
「ち、違う、ロックオンとはそんなんじゃない」
ティエリアは頬を染めて否定する。
(照れちゃって。マスターかわいい)
(イフリール。マスターをからかうのはよしなさい)
(いいじゃないかマリア。まぁ、この変にしとくかな)
イフリールは少女の姿と服装をしているが、少年である。そのまま、イフリールは炎の翼をゴウっとうならせて、仮想空間に溶けていった。
「そ、その、ロックオン、ごめんなさい。AIイフリールはちょっと変わっていて。何度もプログラミングしているのですが、素直にならなくて」
「どこか、ティエリアに似てるな。素直じゃないとことか」
顔立ちも、美しすぎるイフリールは、どこかティエリアに似ている。
「まぁ、ティエリアには翼があるとすれば、炎より氷だな」
「ちょ、マリア!」
マリアが、ティエリアのデータに勝手に氷の翼を書き加えた。
オーロラに光る六枚の、氷でできた翼をもったティエリア。
(マスター、よくお似合いです)
「マリア!」
「すっげー美人」
「そ、その」
ティエリアは心拍数があがっているのを感じていた。
ロックオンの顔が、すぐ近くにある。
ロックオンが、ティエリアの体を抱きしめる。
氷の翼は透けていて、抱くことに支障はない。
そのまま、ロックオンの唇が、ティエリアの唇に重なった。
ティエリアは、驚いたが、目を瞑った。
(AIマリアを、またご利用ください。次回のご利用をお待ちしております)
仮想空間から現実世界に戻る。
バーチャル装置から出たティエリアとロックオンは、現実世界でも唇を重ねるのであった。


NEXT