「ティエリア。唄が聞きたい」 「なんの唄がいいですか?」 「なんでもいい」 バルコニーに出て、二人は寄り添いながら新円を描く銀の月を仰いでいた。 「ティエリアの歌声は綺麗だから。何度聞いても飽きることがない」 「褒めても、何も出てきませんよ」 ティエリアは歌いだす。 遥かなる歌姫の曲を。 罪深い二人は愛し合う 罪深い二人は慈しみ合う ユダの刻印はその胸に刻まれた ユダの刻印はその想いに刻まれた 神は贖罪を求める 罪深い二人に贖罪を求める 二人は逃げ出す 互いの手と手を握り合いながら 天使の翼は堕ちた もう元には戻れない 二人は堕ちた もう後にはひけない それでも二人は愛し合う 何度でも愛し合う 出会いと別れを繰り返す 出会いと別れを繰り返す 何度でも 何度でも 何度でも 罪深い二人は愛し合う 罪深い二人は慈しみ合う ユダの刻印はその胸に刻まれた ユダの刻印はその想いに刻まれた 神の子でありながら 二人は神を裏切り愛し合った 二人は逃げ出す 互いの手と手を握り合いながら 幾万年の愛を続けて 幾万回の愛を囁いて 何度でも出会うよ あなたに 何度でも 何度でも もう一度出会うよ あなたに もう一度愛を囁くために あなたに伝えたかった 愛しいるって ラブファントム 僕は愛の道化師 愛しているって幾万回も囁いて ラブファントム 僕は愛の道化師 愛してるって 幾万回でもあなたに愛を囁く あなたに伝わったかな 愛してるって言葉 罪深い二人は愛し合う 罪深い二人は慈しみ合う ユダの刻印はその胸に刻まれた ユダの刻印はその想いに刻まれた ロックオンが、エメラルドの瞳から涙を零した。 「ティエリア、もういいから!」 ぎゅっと、ティエリアを抱きしめる。 「ずっと傍にいる。愛してるって言葉もちゃんと届いている。この愛はきっと、罪じゃない」 「僕は、あなたに愛しているといえなかったんです。愛しています」 「ちゃんと、今届いているよ。愛している、ティエリア」 「愛しています」 寄り添い合いながら、涙を流しながら抱きしめあう。 なんて、痛い愛なのだろうか。 新円を描く銀の月が、二人をじっと照らしている。 「僕は、ずっとあなたに縛られていた。そして、これからもそれを望む」 「見えない鎖で、ずっと縛ってやるよ。俺から離れられないように」 「見えない鎖は、あなたと繋がっています」 深く口付けを交わす。 「愛しています」 「俺も愛している」 何度も、何度も深く唇を重ねる。 「愛していると、幾万回でも囁きます」 「じゃあ、おれは幾億回でも囁く」 ティエリアの細い肢体を抱きしめる。 「あなたに、もう一度出会えて良かった。どんな形であっても」 「俺も、もう一度ティエリアに出会えて良かった。もう一度、こうしてティエリアを愛せる」 「僕を憎んではいないのですか?」 ティエリアが首を傾げる。 「憎めるわけないだろ。愛しているんだから」 「僕に、勝手に命を作られたのに?」 「それでも、愛している」 ロックオンが、ティエリアの髪をすく。 白い頬に手を当てる。 そして、もう片方の手をとると、自分の心臓の真上に持ってこさせた。 ドクン、ドクン。 「あなたの鼓動が聞こえる」 「お前のための鼓動だ。俺は、お前のためだけに生きている。お前を愛するためだけに生れてきたんだ」 「罰は、受けます。でも、あなたを愛しています」 「俺だって、罰は受ける。でも、ティエリア、お前を愛している」 二人は、銀の月の光を浴びながら、いつまでも抱きしめあっていた。 NEXT |