ユダ−背徳の罪−「罰を受ける時」







そのまま、ティエリアは眠り続けた。
流石にいぶかしむロックオン。
「ティエリア、おい、起きろ」
ティエリアは、丸一日眠り続けた。
医者を呼ぼうかと想ったが、ティエリアに強く止められていた。
二人の生活に、誰かを干渉させてはいけないのが二人できめた秘め事だった。
「ティエリア。愛している。だから起きてくれ」

「・・・・・・・・・・・ごめんなさい」
ゆっくりと、ティエリアが目を開ける。
「ああ、良かった。もう目を覚まさないのかと思った」
胸を撫で下ろすロックオン。
「大丈夫です。最近、少し睡眠時間が長くなってしまって・・・・どうしてでしょうか、僕にも分かりません」
「大丈夫か?医者に診てもらったほうがいいんじゃないか?」
「大丈夫で・・・・ゲホッ、ゴホッ」
「おい、ティエリア!」
ティエリアは苦しそうにせきをしだす。
背中を撫でるが、なかなかせきは収まらない。

ゴボリ。
ボト、ボト、ボト・・・・。

「ああああ・・・・・」
ティエリアが絶望の声を漏らす。
大量に吐血した。
ロックオンの目の前で。
「ティエリア!!」
「ゲホッ」
ティエリアはまた血を吐いた。
震える手で、枕元にある薬の瓶に手を伸ばす。
「これか!」
それをとって、中身をあけてティエリアに渡す。
ティエリアは薬を飲んだ。
それでも、吐血を繰り返す。
「死ぬな、ティエリア!」
ロックオンは、意識を失ったティエリアを連れて、車にのせて大きな町まで出た。
そこの病院に運び込む。

「これは・・・・うーん・・・・なんとも」
診察した医師は、ティエリアの病状に首をひねる。
「なんの病気か分からないんですか!?」
「その前にこの子・・・・・人間じゃないね」
ギクリ。
ロックオンが強張る。
世の中には、倫理をこえた生命体・・・半分体にサイボーグを埋めこんだ人間も存在するので、医師は驚きはしなかった。
「とりあえず、様子を見よう。このまま入院してもらう」
「分かりました」
こうして、ティエリアは大病院に入院することとなった。
「ティエリア、目を覚ませよ。早くよくなろうな?」
ロックオンは、毎日毎日、眠り続けるティエリアに声をかける。

ティエリアが意識を失って、一週間後。ロックオンは、専属の医師に呼び出された。
「悪いけど、このままじゃ多分・・・放置しておくと、死ぬと思う」
「そんな!」
「薬の成分を分析したけれど、とてもじゃないが僕の手には負えない。他の病院をまわっても、多分ダメだろう。
肺をやられてるね。再生治療を施してやられていた部分は再生させた。なのに、さっきレントゲンをとったら肺にもう影があった。診察したが、再生治療した箇所がやられている。多分、人工生命体がかかる特有の病気だ。僕は、以前ソレスタルビーイングに所属していた。そこでは、人工生命体の開発が進められ、何人か生み出されていた。その人工生命体に、同じ症例を見たことがある。特効薬は、ソレスタルビーイングの研究員が開発したと聞いている」
「ティエリア・・・・・」
じっと、眠り姫のように眠り続けるティエリアを見つめる。
失うわけにはいかない。
愛し、そして守ると誓ったのだ。
「特効薬は、手に入りませんか?」
「手に入れるには、ソレスタルビーイングと接触する必要がある」
ロックオンは思い出した。
決して、ソレスタルビーイングと、何があっても接触してはいけないとティエリアに咎められていたことを。それはそうだろう。ティエリアは、倫理に逆らいロックオンを蘇らせたのだから。

「この病気は、多分ウィルス性だ。君のレントゲンを念のためにとったが、君の肺にも影があった」
「俺のことなんてでうでもいいんだ」
「ふーむ。悪いが・・・・手に負えない上に、こんな状態で運び込まれては・・・・」
「ソレスタルビーイングと接触できますか?」
「ああ。この病院も、ソレスタルビーイングの機関とはコンタクトを取っている。特効薬は手に入るだろう。それで、助かるはずだ」
「連絡を、とってください。お願いします」
頭を下げるロックオンに、医師は肩に手を置いた。
「もう、すでに連絡はとってあるんだ。私も、患者をみすみす死なせたくないからね。会いたいという人物が来ている。君、入ってきたまえ」

ドアを開けて、入ってくる人影。その人物は、ロックオンが記憶していた少年の姿ではなかった。
すっかり成長し、立派な青年になっていた。

「刹那・・・・・」

「説明してもらおうか。あんたは誰なんだ?」


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