「すまないが、先生、席を外してもらえるか」 刹那が医師に目配せする。 「その前に、ロックオン君と二人で話をもう少しさせてもらえるかな?」 「分かった」 刹那は一度病室を出た。 「先生?」 「ロックオン君。診察を受けてもらうよ」 「俺のことはいいから!」 「だめだ。君も、私の患者だ」 そうして、ロックオンもまた診察を受けた。 医師は刹那を説き伏せた。事情が事情なので、刹那も納得してくれた。 ティエリアの時と同じように精密検査を受ける。 その結果に、医師は呆然となった。 「結論からいうと・・・・」 「同じ病気でも、変異性のウィルスなんだろ?」 「どうしてそれを」 「自分の体のことくらい、自分で分かるさ」 「CBが作った特効薬は、君にはきかない。ティエリア君は助かるだろう。だが、このままでは君は・・・・」 「報いなんだよ。神に逆らった罰かな」 「全力は尽くす」 「ありがとう、先生。じゃあ、刹那が待ってるから」 ロックオンは、医師を残してティエリアの病室に向かった。 ティエリアの病室では、刹那が愛しそうにティエリアの手を握っていた。 その桜色の唇に、唇を重ねる。 静かに。 誰よりも愛しそうに、じっとティエリアを見つめる刹那。 「今でも愛している、ティエリア。お前は俺が守る。絶対に、守ってみせる。死なせはしない」 ティエリアの頬を撫でる刹那。 ロックオンは、エメラルドの瞳を細めた。 ああ、そうか。 この二人は。 そうなのか。 「待たせてすまない、刹那」 病室に入ってきたロックオンに、刹那がきつい眼差しを向ける。 「説明してもらおうか。あんたは誰なんだ。なんでロックオンの姿をしている?どうしてティエリアと一緒なんだ」 「俺は・・・・・・」 ロックオンは、床を見つめた後、刹那を見つめた。 「刹那、大きくなったな」 「ロックオン・ストラトスだというのか?」 「正確には違う。ティエリアが生み出した、ロックオン・ストラトスの姿と記憶をもつ人工生命体だ、俺は」 「ティエリアが!!」 刹那が、言葉に詰まる。 そのまま、長いこと刹那と話をした。 今までどんな風に暮らしてきたのか。 「まさか、ティエリアがそんな真似をするなんて・・・」 「ティエリアを責めないでやってくれ。悪いのは、全部ティエリアを残して死んだ俺だ」 「俺が・・・・俺が、もっとティエリアを愛していれば!!」 「刹那」 「仮だが、あんたのことはロックオンと呼ばせてもらう。ロックオン。あんたを失った後、俺とティエリアは互いに寄り添い合い、あんたの穴を俺が埋めていたんだ。ティエリアを愛して、体の関係も持った」 「そうだったのか」 「ショックは受けないのか?」 「いいや。俺が死んだ後のティエリアが、どんな状態になるかくらい想像はつく。誰かに縋りつくしかなかったんだろう。でも、それが刹那で良かった」 「ロックオン?」 「ずっと、ティエリアを支えてくれてたんだな。ありがとう、刹那」 寂しい微笑みに、きつめだった刹那のルビーの瞳が伏せられた。 「あんたは、ずるい。こんな形で、またティエリアを手に入れるのか」 「いいや・・・・・」 「ロックオン?」 「俺も、ティエリアと同じ病気だそうだ。変異性のウィルスだ。多分、助からない」 「あんたは!またティエリアを残していくのか」 「罰なんだよ。これは。罰を受ける時がきたんだ。ティエリアも、罰を受けている、今。でも、ティエリアは助かるはずだ。ティエリアが助かるなら、俺は満足だ」 NEXT |