ユダ−背徳の罪−「贖罪」







人工生命体のみにかかる謎の病気に対する特効薬は、薬のほかにもワクチンがすでにCBで開発されていた。
それを投与され、ティエリアの病気は治っていった。
目を覚ましたティエリアは、自分の置かれた状態に愕然とした。
そして、刹那と対面する。
「刹那」
「ティエリア。ずっと探していた。お前は間違っている」
「僕は・・・・・・・・そうだな。間違っているだろうな」
「分かっていながら、なぜこんな真似をしたんだ!人の命は、そう簡単に作っていいものではないだろう!」
「じゃあ、CBの研究員がしていることはなんなんだ!新しく人工生命体を開発して生み出しているじゃないか!」
「それとこれとは別だ。CB研究員は、確かに人工生命体を開発している。だが、生れてきた者はちゃんと愛されて家庭にひきとられて、人間として生活している。お前のしていることは、本当のロックオン・ストラトスを愚弄する行為だ」
「・・・・・・・・・・・っ」
ティエリアが声を失う。
「本物のロックオン・ストラトスを作れるとでも思ったのか?どんなに本物に似ていても、あれはお前が愛したロックオンじゃないんだ」
「・・・・・・・・」
「お前のしていることは間違っている。死者は蘇らない」
「では、彼は誰だというんだ」
「ロックオン・ストラトスの姿を形をした影だ。亡霊だ」
「!」
目の前に、直視することを避けていた真実を突きつけられる。

どんなに愛しても、本当のロックオンは戻ってこない。
今のティエリアが愛するロックオンは、死んだロックオンの身代わりなのだ。

「そんなこと・・・・初めから、分かっていたさ・・・・。間違っていることも・・・・」
「だったら何故、止めなかった」
「ロックオンを、愛しているから」
ティエリアは、石榴の瞳から涙を溢れさせ、繰り返す。
「ロックオンを愛しているから。もう一度愛したかった。もう一度出会いたかった・・・・・うわああああああ」
号泣するティエリアを、刹那が抱き寄せる。
「刹那、刹那、刹那!」
「ティエリア。愛している。お前を愛している。ロックオンを愛していても、俺はお前を愛している」
「僕は、でも、もう戻れない」
「それでも、お前を愛している」
「刹那・・・・」
ティエリアは、刹那と唇を重ねた。
「僕は・・・・ロックオンを裏切った。彼を作り出した。そして作り出した命に彼を重ねて、愛した」
「ティエリア」
「僕は、彼を愛している。最後まで、愛し続ける」
「それが、お前の結論か。間違っていると分かっていながら、あのロックオンを愛し続けるのか」
「間違っていても構わない。僕は、もうとっくの昔に壊れているんだ。彼と、生きる」

刹那が、哀しそうに声を落とす。

「それは、できない」
「なぜ!」
「あのロックオンは、お前と同じ病気だ。しかも、変異性のウィルスだ。特効薬もワクチンもない」
「そんなばかなことがあるものか!!」
ティエリアは、ベッドからふらつきながら立ち上がる。
「ダメだ、お前はまだ病気が完治していない。寝ていろ」
「嫌だ!彼の元にいくんだ!!!」
何度でも、起き上がろうとするティエリア。
刹那は、溢れるティエリアの涙を吸い取って、その体を抱き上げた。
「刹那?」
「彼に、会わせてやる」

そのまま、ティエリアを抱きかかえ、ロックオンの病室へと刹那は向かった。


NEXT