「よお。ティエリア、元気になったな」 「ロックオン・・・・」 「刹那、ありがとな。会わせてくれて」 ロックオンは病気が進行し、寝たきりの状態になっていた。 変異性のウィルスは、それまでの病気と違い、蝕むスピードが極端に早かった。 「ティエリア。愛している」 「ロックオン。僕も、あなたを愛しています」 「最期にお前にまた会えてよかったよ。俺はティエリアに作られて、生れてこれてよかった。またティエリアと出会えたから。ティエリアを愛せてよかった」 「何を言っているんですか、ロックオン!一緒に生きるんです!」 「ごめんな、ティエリア。刹那と幸せになってくれ」 ロックオンが、エメラルドの瞳で哀しく笑う。 「嫌です、ロックオン、ロックオン!」 「愛しているよ、ティエリア。ずっとずっと、愛しているよ」 刹那の手から、ティエリアは逃げ出して、自由のきかない体を床に這わせ、ロックオンのベッドにしがみつく。 「こんなにもあなたを愛しているんです。僕を残していかないで下さい!」 「俺も愛しているぜ、ティエリア。何万回でも囁く。愛している」 ティエリアはふらつきながら立ち上がり、ロックオンの唇に唇を重ねた。 涙が、ポタポタとロックオンの頬に落ちた。 「愛しています」 「愛している」 刹那は、そんな二人を痛々しげに見守る。邪魔はしない。 「俺は大丈夫だから。信じろよ。な?元気になってまたお前を愛するから。やっぱり、刹那なんかにはわたさねぇ」 ロックオンの手が伸びて、ティエリアの白い頬を触る。 その手をぎゅっと握り締める。 「はい。信じています」 ティエリアは、そこで力尽きた。 「刹那。ティエリアのこと、頼むな」 「ああ、分かっている」 刹那は、ティエリアのことを知った時、マリナと別れを告げた。 マリナは泣いていた。 もう、刹那も後戻りはできなかった。 「愛しています、ロックオン」 「ああ、愛してるぜ、ティエリア」 毎日のように、ティエリアはロックオンの面会に訪れた。 ロックオンへの治療は続けられたが、効果はなかった。 ティエリア自身、まだ病気は完全に治っていない。 闘病生活を続けていた。 隣には、いつも刹那が付き添っていた。 体に無理をいって、ロックオンの病室を訪れるティエリア。 愛が罪になるというのか。 こんなにも愛しているのに、この愛は罪なのか。 贖罪の時なのか。 どうして、僕ではなくロックオンなのだ。 どうして。 ティエリアは病状が悪化し、二日間意識を失って昏睡状態に陥った。 目が覚めると、刹那の真紅の優しい瞳が飛び込んできた。 「ティエリア。愛している」 「刹那・・・・・・」 「愛している。愛している!!」 狂おしいくらいに、胸にかき抱かれる。 「離して。ロックオンのところに行かなくちゃ・・・・・」 「だめだ、ティエリア、行くな!」 抱きとめる刹那を懸命に振り払う。 壁伝いに、ティエリアは歩く。 ティエリアとロックオンは同じ病気であるため、しかもウィルス性で互いに感染の危険があるために同じ病室にはされなかった。 空気感染するタイプのウィルスだったので、二人を会わせるのも本当はいけないことだったのだ。 病院側が二人を引き離していたのを、刹那が無理をいって会わせていたのだ。 「ロックオン?」 病室には、白い花が飾られていた。 ベッドは、もぬけの空だった。 「ロックオン、どこ?」 ティエリアが病室から抜け出したと知ったかかりつけの医師が、ロックオンの病室で呆然と座り込んでいたティエリアを呼び戻しにきた。 「先生、ロックオンは?」 「・・・・・・・・・・彼は、昨日死んだよ」 「嘘」 「・・・・・・・・ティエリア」 刹那が、静かに歩み寄ってくる。そっと、抱き寄せられる。 「嘘。そんなの嘘。どこにいったの、ロックオン?どこ?僕を置いていないっていったじゃないか。こんなにも愛しているのに。一緒に家族になってアイルランドで暮らそうって。一緒に幸せになろうって・・・・」 「ティエリア。彼は、もういない」 「こんなの嘘だあああああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!!」 ティエリアの悲鳴は、いつまでも響いていた。 NEXT |