「嘘だ、こんなの嘘だああああああああ!!」 「ティエリア、しっかりしろ、ティエリア!」 「嘘だ、嘘だ、嘘だ!!」 首を振るティエリア。 ベッドの傍にいけられた花瓶を叩き落とす。 白い花が、無残に踏みにじられる。 「嘘だ!ロックオンが死んだなんて嘘だ!ロックオンが僕を残して死ぬはずがない!また僕を一人にするなんて、そんなはずがない!あんなにも愛してくれていたんだ!僕と幸せになると約束したんだ!」 「ティエリア!」 刹那が、泣き叫ぶティエリアを抱き寄せる。 「嘘だあああああ!!」 刹那が、ティエリアを抱きしめる。 「ロックオン・・・こんなにも愛しているのに・・・・また僕を置いていってしまったの?」 泣きながら、刹那の胸にしがみつく。 「俺が守る。俺がティエリアを愛する。俺がついている」 「刹那・・・・・」 刹那は、そのままティエリアを抱き上げると、ティエリアの病室まで連れて行った。 「彼から、託された手紙だ」 「ロックオンの・・・・」 (ティエリアへ。この手紙を読んでいる頃、俺はもうこの世界にはいない。ティエリア、俺は神に逆らってティエリアの手によって生み出されたけれど、ロックオンとして生きれて幸せだった。俺は、ティエリアを愛しているから。誰よりも、ティエリアを愛しているから。俺は、最初からこの世に存在してはいけなかったんだ。それが、土に還るだけだ。だけど、これだけは本当だ。お前を心から愛していた。たとえ、本物のロックオンの身代わりだったとしても、愛していた。身代わりでも構わなかった。俺は、本物のロックオンじゃない。でも、お前は俺を愛してくれた。俺は、お前に愛されてとても幸せだった。家族になりたかった。本物のロックオンは、何も言わずに死んでしまったそうなので、俺は手紙という形で言葉を残す。直接、お前に伝えれないことを許してくれ。俺は病気が治らないと聞いて、それでも別に構わないと思った。人の命はいずれ尽きるものだ。それが人工の生命であれ、変わることはない。刹那がお前の前に現れ、お前を愛すると誓ってくれた。お前も刹那を愛しているんだろう?素直になれ。俺は、ティエリアを愛することができて本当に良かった。刹那は、お前をずっと守ってくれる。 本物の俺が死んだ時のように、これからは刹那がお前の傍にいて、お前を愛してくれる。お前は一人じゃない。 刹那に愛されている。そして、本物のロックオン・ストラトスにも、この俺にも。たくさんの人間に愛されているよ、ティエリア。愛しているよ、ティエリア。愛している) 手紙は、ところどころインクが滲んでいた。 書きながら、きっと涙をいくつも落としたのだろう。 「ロックオン・・・・・・・・」 ティエリアは、手紙を胸に抱きしめた。 「僕を愛してくれて、ありがとう。僕も、あなたを愛していました」 銀色の涙が溢れる。 涙はいくつもいくつも溢れる。 昔のように、錯乱して鎮静剤を打たれるような事態にはならなかった。 心の何処かで、いつかこんな日がくるかもしれないと覚悟していたのだ。 ロックオンという生命を作った時点で。 結末は、きっと破滅だろうと分かっていた。 それでも、もう一度彼に会い、彼を愛し、伝えれなかった愛しているという言葉を伝えたかったのだ。 「愛しています、ロックオン」 NEXT |