ナイトクロス「モミモミ大会」







「ティエリア、準備は万全か?」
正装した刹那が、ティエリアの姿を見て固まった。
「刹那?」
ティエリアは、ジャボテンダー抱き枕を抱きしめたまま、不思議そうに首を傾げる。
あどけなく幼い表情をしているが、姿は絶世の美少女だ。
その大人のラインの体と、美しすぎる顔に浮かんだ表情のミスマッチがまたたまらなくて、女性陣たちはティエリアに見惚れていた。アレルヤもライルも。

刹那は固まっていたかと思うと、ティエリアの前までやってくると、いきなりその人工バストに触れた。
「刹那、どうしたんだ?」
触れたかと思うと、モミモミと両手で揉み始める。
「せ、刹那。ダメ、なんか変なかんじがする・・・・」
人工バストは、その触った感触までつけた人物に伝わらせる。肉体の一部のようなものだ。本当に胸を揉まれているような錯覚に陥り、ティエリアは紅色の唇から甘い声を出す。
もみもみ・・・・・。
「いつまで揉んでるかぁ!」
ミス・スメラギが刹那の頭をはたいた。
「痛い」
「痛いじゃないでしょう、この子は。その人工バストは、感触まで本人に伝わるのよ」
「そうなのか。気持ちよかったか、ティエリア?」
「うん、気持ちよかった」

ブバッ。
アレルヤは鼻血を垂らしてその場に倒れた。
「きゃあああ、アレルヤ、しっかりして!」
マリーが悲鳴をあげた。

「ティエリア。俺も揉んでもいいか?」
ライルが真剣な表情でティエリアを見つめる。
「どうぞ」
ドーンと、ライルの前にDカップになった豊満な胸が差し出される。
本当に、漢だ。ティエリアは。
本当の女性であればビンタされるであろうが、ティエリアは気にした風もない。
堂々と、胸をはっている。
ゴクリと、唾を飲み込んだ。
恐る恐る、揉む。
モミモミ。モミモミ。
本物の胸のようだ。
「あふ・・・・・」
ティエリアの唇から、甘い吐息と喘ぎ声が漏れる。

「そこまでよ、ライル!」
ティエリアが、力なくその場にへたりこんだ。
ガーターベルトをした際どい下着が、スリットの間から見えた。
男性ではない無性のティエリアに、女性ものの下着をつけさせても平気だ。男性の一物をもたぬティエリアは、いつもはボクサーパンツを好んではいているが、下肢に性別を決定づけるものは何もないため、大人びたレースで彩られた、ガーターベルトと繋がった際どい下着を身につけていた。
白い太ももと、下着をもろに見てしまったライル。
ブバッ。
「俺、生きてて良かった」
ライルも鼻血を出して、その場に倒れた。

「俺もだめだ」
その場にいたイアンも、同じように鼻血を出して倒れた。
ラッセはすでに鼻血の海に沈んでいる。

「みんな、どうして鼻血を出して倒れているんだ?」
へたりこんだまま、ティエリアは首を傾げる。
「あなたねぇ・・・・・ああ、もう、ティエリア。仕方ないわね、この子は」
ミス・スメラギは豊満な胸にティエリアの顔を埋めさせる。
「ミ、ミス・スメラギ・・・・」
そのやわらかい感触に、ティエリアが顔を真っ赤にさせて首を振る。
「つまりは、そういうこと。あなたの行動で、みんな鼻血出しちゃったのね」
「僕は・・・・・そんなつもりでは」
「だめよ。自分のことを僕って呼んでは。いい?唄を歌う時のように、女性ソプラノの声で私って自分のことを呼ぶのよ?そして、女の言葉遣いをするの」
「ミス・スメラギ。私は、皆が鼻血を流すほどに魅力的かしら?」

刹那が、一人鼻血も流さずに無表情でティエリアに手をかして、立ち上がらせる。
二人で並ぶと、本当に似合いのカップルだった。
美青年、ともいえる姿に成長した刹那とティエリアはよく似合っていた。

「そう、その調子よ。あなたのあまりの魅力的な姿に、みんなノックダウンされたの」
「ジャボテンダーさん・・・・・私、がんばります」
モミモミ。
刹那は、またティエリアの胸を揉んだ。
スパーン。
どこからか、ミス・スメラギがスリッパを取り出してそんな刹那の頭をはたく。
「ほんとにもう、大人に見えてまだ子供なんだから、刹那は!」
「痛い・・・・」
殴られた頭を、刹那は撫でる。

「刹那、おかしいよ」
ティエリアが、笑い声をあげる。
ちゃんと、女性ソプラノの綺麗な女性の声だ。

「俺が、守るから」
「刹那」
「ティエリアは、俺が守るから」
「では、僕が刹那を守ろう」
互いに、誓い合うように、抱きしめあった。

「本当に、大丈夫かしら?」
ミス・スメラギが不安そうに二人を見守っていた。



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