「この姿を・・・・あの人に、見てもらいたかった」 パーティーが主催される館の駐車場で、車に乗ったティエリアと刹那はパーティーがはじまる時間を待ちながら、二人で互いにどう行動をとるか念密な計画を立てていた。 もしも、正体がばれてしまったら落ち合う場所を決める。 どうか、そんなことが起こらないようにと祈るような気持ちになっていた。 「きっと、ロックオンは天国で鼻血を出しているさ」 「そうだといいな・・・・」 そっと、満点の星が煌く夜空を見上げる。 ぐいっと、引き寄せられる。 細い腰を引き寄せられ、ティエリアが刹那を見つめる。 「刹那」 「愛している。お前は、俺が守る」 紅をしいた唇に、唇を重ねる。 深く、深く。 魂まで溶けるようなキスを。 「僕が、君を守る」 「ティエリア」 また唇が重なった。 舌を絡ませあう。 「ふ・・・・」 いけない。 これ以上は、だめ。 「刹那、これ以上は・・・・・」 スリットの入った太ももをなで上げる感触に身震いしながらも、甘い吐息を出す。 「分かっている。すまない・・・・・しょせんは、俺も男か・・・・」 「刹那は、そんなことはない」 欲望の対象で、ティエリアを見たりすることのない刹那。 今だって、その瞳は綺麗に澄んでいる。 「お前は、俺が守るから」 「ありがとう、刹那」 首にしていた、ナイトクロスのペンダントを、刹那に渡す。 「落ち合うまで、それが君を守ってくれるだろう」 「ナイトクロス」 「夜の十字架。誓おう。僕は、何が起きても、君の傍に戻ってくる」 「ならば、おれも夜の十字架に誓う。何が起きても、ティエリアを守ると」 「刹那」 「ティエリア」 車のクラクションが鳴る。 次々と、高級車が駐車場に泊まり、中から運転手を伴った着飾った男女が出てくる。 「舞台の、始まりだ・・・・」 「健闘を祈る」 「僕も、君の健闘を祈る」 互いに手を重ねあった。 ナイトクロスが、きっと刹那を守ってくれる。 刹那が、きっと僕を守ってくれる。 ロックオンも、僕を守ってくれる。 大丈夫。 自信を持って。 息を吸い込み、ティエリアは車から降りるとパーティー会場に向かった。 「楽しい夜の、幕開けだよ」 そんなティエリアを、最上階の窓から見下ろしている影があった。 ティエリアとシンメトリーをえがくような姿形。双子、というかティエリア本人に見える。 双子でも、どこか違うものだ。 だが、その人物はまるでティエリアのようだ。柔らかにウェーブを描く紫紺の髪に、眼球を保護する眼鏡、石榴色の瞳、華奢な体つき、細い肢体。 「リジェネ。本気か?」 「僕が、嘘をつくとても思ってるの?」 小悪魔の表情で、リジェネはリボンズを振り返る。 「ティエリアは僕のものだよ。僕の、兄弟」 「ティエリアは・・・・計画の妨げになる」 「だから、消そうっていうの?そんなの、僕が許さないよ」 着飾ったリボンズと同じように、正装したリジェネ。 男性、であるはずだ。だが、どこからどう見ても無性か女性に見える。 「ティエリア。鳥篭の中にようこそ」 リジェネは、ティエリアよりもやや高い声で楽しそうに笑うのであった。 NEXT |