パニックパッニク!!







ティエリアは、目の前で得体の知れない匂いを放つ液体を試験管に入れてかき混ぜた。エメラルド色に、神秘的に輝いていた。
片方には、メル友のコードギアスで魔女として有名なC.C.(作品違うがな)が送ってくれた、その名も「若さをなくすドラゴンの秘薬」が入っている。もう片方には、時折サークルのHPにかきこみをしてくれるネット友人の鋼の錬金術師に出演する、鋼の連金術士として有名な(作品違うがな)エドワード・エルリックが最近手に入れたという「成長の涙」が入った金色の試験管。
そして、もう一つの試験管には、ドクター・モレノが開発した発毛剤・・・・なぜ、ここで発毛剤が出てくるのかというツッコミは、ドクター・モレノにしてほしい。必ず成功するきっかけになると言われ、渡された。
それを混ぜようとしているティエリアもティエリアだ。

ティエリアは、それらの液体を一つに混ぜた。
ゴポゴポという、マグマからの叫びのようないような気体が発生するが、なぜか金木犀の香りだった。
「あ、匂いはいいかも・・・・不味そうだけど」
液体は単品では綺麗だったが、混ぜるとドス黒く変色してしまった。

「いざ、新しい未来を切り開くらために、参らん」
ティエリアは、念のため遺書を残しておいた。
ぬかりはない。
そんなことするくらいなら、飲むなよって、ドクター・モレノがいればつっこみそうだ。ちなみに、ドクター・モレノはミス・スメラギの親知らずをひっこぬいている途中だった。全身麻酔にしてくれとうるさかったので(痛いのが怖い)ミス・スメラギは意識を失っている。
「ふう、成功だ」
まるで大手術を終えたかのようなドクター・モレノ。ただの親知らずをひっこぬいただけなのに。
ドクター・モレノは急ぎ足で研究室に向かった。ティエリアの飲む薬だが、なぜか嫌な予感がする。しまいには、走り出した。
「やばいなぁ。あれ、ほんとに育毛剤だったかなぁ?」

「いざ、新しい未来を切り開くらために、参らん」
遺伝子を操作され、ナノマシンを組み込まれたティエリアは、自然の力では老いるということがない。
ティエリアは、成長したかった。もう身長はいらないが、外見が20代前半になりたいと常日頃から思っていた。
ドス黒い液体を、一気に飲み干す。
「あ、苺味だ・・・・美味しい・・・・・・・・・ううう」
お約束のように、胸が苦しくなって、ティエリアはドクター・モレノの研究室で蹲った。
「やはり、失敗だったか?」
取り扱い説明書には、これでできる「成長の秘薬」は命に関わるものではなく、失敗しても体に害はないはずである(ならなぜ遺書を用意した。いや気分の問題だ)
「何が、失敗して・・・・・」
ティエリアは、苦しみながらも意識を失うまいと、ふんばっている。
「あーやっぱり。間違えて、育毛剤じゃなくって発毛剤渡しちゃった。てへ」
舌を出してみるが、外見がおっさんだけに可愛くない。

「なんだと!実験は失敗だああああああ」
ティエリアは叫んだ。
「まさか、飲んじゃったとか?」
「飲んじゃった」
あはははと、二人で笑いあう。
ティエリアは次の瞬間には、昏倒していた。

ああ、ロックオン。なぜか、ロックオンがよだれたらしているのが見えます・・・。
なんて変な夢だ・・・・。
ロックオンは、よだれをたらしていた。
じゅるり。
アレルヤも刹那も、やはりか、この犯罪者め・・・・と思いながらも、沈黙している。場所は、変わってロックオンの部屋だった。
「もう、ドクター・モレノ、ナイス!」
グッジョブ!と親指をたてるロックオンに、ドクター・モレノも嬉しそうに親指を立てた。
「急いで、服を買ってきた甲斐があったなぁ。早く目、覚まさないかなぁ」
ロックオンの声は弾んでいた。
(この犯罪者め!ロリコン!!)
アレルヤと刹那は、胸の中で絶叫した。

「あれ・・・・生きてる」
ティエリアが、ロックオンのベッドで目を覚ました。
「お、ティエリア、気分はどうだ?」
「どうにもこうにも・・・・あれ?髪が伸びてる??」
入れたのは発毛剤のはずなのに、ティエリアの紫紺の髪は床に届くかってくらい思い切り伸びてた。
「声も変・・・」
自分の喉に手をあてるティエリア。
「問題は、ないようだね。あとは二人でよろしくやってくれるかな」
付き合ってられないと、アレルヤが外に出た。
「真性ロリコンだったとは・・・・もはや手のうちようがないな」
刹那も、ため息をついて廊下に出る。

「あれ、ロックオン・・・・ふにゃ?」
ベッドからおりようとして、ベッドが巨大化していることに気づいた。
「なんでこんなにベッドが大きく・・・・あれ?服も・・・・ゴシックロリータな服に変わってる。ご丁寧に、ヘッドフリルまである・・・」
ふわふわな髪飾りとレースとリボンつきのヘッドフリルを確認したティエリア。
「ロックオンが・・・・・ぎゃあああ、巨人に!?」
「いや、違うから。ティエリアが縮んだんだぜ?」
「え、縮んだ!?」
見ると、ドクター・モレノも大きい。
「ティエリア。君の実験は、反対の意味で正解した。若返ったよ!」
スクリーングラスの下には涙をためている。ハンカチを持ち出したドクター・モレノ。意外と乙女キャラかもしれない。
「ぎゃああああ、なんだこれは!?」
ご丁寧に、姿見の鏡まで用意されていた。そこに映っていったのは、10歳前後の愛らしいとてもかわいい美少女だった。
パクパクと声なく口を開けたり閉めたりするティエリアに、関心したようにドクター・モレノがこう言った。
「君は、発毛剤を入れてしまったことで、10歳の美少女になってしまったんだ!実験は、ある意味成功だ!」
「解毒剤は!?」
ちゃんと用意していたティエリアである。
「それがねぇ。成長薬の解毒剤だから、飲めばつまりは若返る。これ以上若返ると、赤ん坊になってしまうよ?
それでもいいというのなら、ほれ、どうぞ」
ドンと、ドクター・モレノがポケットから「ティエリア用解毒剤」とラベルの貼られた小さな瓶を取り出す。

「おーまいがっ!!!」
ティエリアは打ちひしがれた。
なんてことだ。計画がめちゃくちゃじゃないか。

「まぁ、しばらくはその姿で我慢するんだね。解毒剤のほうは、こっちで作っておくから」
「しばらく・・・10歳の美少女でいろと!?」
「君もいろいろ問題があるようだねぇ。特に君の恋人とか恋人とか」
はっとなって振り返ると、ロックオンはよだれを拭きながら近づいてくる。

「ほれほれ。何も悪戯なんかしないから・・・・・」
「うにゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

ティエリアのかわいい絶叫は、トレミー中に響き渡った。



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