「ぶー」 「かわいい顔が台無しだから。いつまでもぶーたれるなって」 「ふんだ」 かわいく髪を編まれ、ロックオンに抱っこされたティエリア。 最初は、本当のロリコンかと焦ったが、期間限定の恋人の子供姿はとてもロックオンを喜ばせた。 何せ、ティエリアは目覚めた時から17歳の容姿をしており、子供時代というものがない。 写真も無論ない。 「プリンさんが食べたい」 「はいよ。食堂でもいこうか」 「うがー!」 ティエリアはかわいい顔で、かわいくない叫び声をあげる。 いつものティエリアならあげない声だ。 「どうしてこんなことに・・・・」 「ティエリア、自信もて。めっちゃくちゃかわいいから!」 「若返っても意味がありません!」 ジャボテンダー抱き枕だと大きすぎるので、サボテンダーの縫いぐるみを抱いたティエリア。 性別も、なぜか女の子に固定されている。 「僕を、食べないで下さいね。犯罪ですから、思いっきり」 「あ、ああ」 ロックオンは、かわいいティエリアに見惚れてそう返すのが精一杯だった。 なんだろう、この果てしなくかわいい生き物は。 ゴスロリの子供服を買ってきて、着せて大正解だった。 怒って笑って泣いて喜んで・・・動く、オートマタドールのようだ。 トレミーにいる誰もが、ティエリアを人形と思い込み、手を伸ばす。その手を思い切りはたくティエリア。 「かわいい、何これ、かわいすぎる。ロックオンだけ独り占めなんてずるいわ!」 「フェルトがそうロックオンを非難するが、ティエリアは人見知りしてしまったかのようで、ロックオン以外に懐こうともしない。 「あー、プリンさんが零れた〜」 ロックオンの膝の上で、プンスカ怒るティエリア。 遠巻きに、トレミーのクルーたちがその様子を伺っていた。 「もー、あれ欲しい!」 「欲しいってミス・スメラギ、ティエリアは人形じゃないぞ?」 イアンが注意するが、麻酔から目覚めたミス・スメラギは欲しいと地団駄を踏んだ。トレミーのクルーの誰もが、似たような心境だった。 「どう、上手くやってる?」 「アレルヤ。今、ドクター・モレノが解毒剤を開発中だ。それまでの辛抱だ、辛抱・・・・・」 自分にいいきかえるように、スプーンをくわえるティエリア。 「たまらん!けしからんかわいさだっ」 ロックオンが一人で萌えていた。 「その、ロックオンが危ないと思ったら、いつでも部屋においで。ロックは外しておくから。保護するよ」 「心配ありがとうにゃ・・・・なぜ、時折発音に猫語がまじるかー!?」 ティエリアが長い紫紺の髪をうっとうしそうにかきあげる。一部を三つ編みにして編んでくれたが、どうせなら全体も結んで欲しかった。 長くて、鬱陶しい。 「ロックオン。髪を肩まで切ってはいけないか?」 「だめ!絶対だめ!!!」 ロックオンの声は、トレミー中のクルーを代表していた。 「ふぁ〜。ロックオン、眠くなってきました」 お昼ごはんとおやつを両方食べたら、ティエリアは眠気に負けてとろんとした目をしていた。 「おーっし、じゃあ昼寝にするかー」 「おい、この犯罪者」 刹那が、背後からロックオンに声をかける。 「だーれが犯罪者だ!?」 「お前だ、お前」 びしっと指さされて、ぐっとロックオンは言葉につまった。 「このロリコンめ!」 「ロリコンで悪いか!ティエリアがかわいすぎるんだ!」 あ、ロリコンって皆の前で認めちゃったよ。 前からロリコンだロリコンだと囁かれていたけれど、認めちゃったよおい。 トレミーのクルー全員が、やっぱりそうだったのかと納得していた。 「ティエリア、昼寝なら俺と一緒にするか?」 ロックオンの膝から立ち上がったティエリアは、じっと刹那の顔を見上げた。 刹那は、いつもは無表情なのに、穏やかな笑顔が浮かんでいる。 それを見て、ティエリアは人形のように精巧な美貌で、にっこりと笑んだ。 う・・・なんだ、この可愛すぎる生き物は・・・。 刹那も、ロックオンの気持ちが少し分かった。 「うん。刹那と一緒にお昼寝する」 にこー。 サボテンダー縫いぐるみを抱いて、ティエリアは刹那の手を握り締める。 「ティエリア、俺は?」 「せっかくこの姿になったんですし、他のマイスターとも親交を高めるべきです。それに、僕のせいでロックオンがロリコンだなんてそんな本当のこと(言っちゃたよおい)で、疑いをかけられるのは僕も苦痛ですし」 「では話は決まったな」 刹那が、ティエリアを抱き上げた。 刹那の首にしっかりとしがみついたティエリアは、ロックオンに手を降る。 「では、また数時間後にでも。あと、今日の夜はアレルヤ・ハプティズムと一緒に寝ることは決まっていますので」 オーマイガッ。 子供になったティエリアは、その心も純真な子供のものに戻っていた。 マイスターと親交を高めるだなんて、そんな言葉普段のティエリアなら出てこないのに。 こうして、ティエリアはお昼寝を一緒に刹那ととった。 刹那のベッドで、サボテンダー抱き枕を抱えて寝る美少女ティエリアと美少年ともいえる刹那の姿を見たロックオンとアレルヤは、何枚も写真のシャッターを切った。それは闇ルートでトレミーのクルーに高額で売買されたという。 刹那の寝顔も、けっこうかわいい。そこに、破壊的な可愛さを伴った10歳の美少女ティエリアが加わると、可愛さはもはや凶器だ。 夕飯は、ロックオンの膝の上に乗って食べた。 「ほら、ご飯粒ついてるぞ」 「もぐもぐ・・・・」 ティエリアのほっぺたについたご飯粒を、ロックオンがとって食べてしまう。 「この、エピピラフおいしでしゅ」 途中で言葉をかんだ。 それを聞いた食堂にいた全員が、胸をきゅんと高鳴らせていた。 「いよ、上手くやってるみたいだな」 「ドクター・モレノ。解毒剤はまだですか?」 「今のところ、30%ってところだな。何せ、成分が反対だからなぁ。来週までかかると肝に命じておいてくれ」 「そんなに・・・・こんなことになるなら、薬なんて作るんじゃなかった」 「いや、グッジョブだから、ティエリア!めちゃくちゃ壊滅的に破壊的にかわいいから!」 「はいはい・・・・」 ティエリアはメロンにフォークをグサグサさしながら、ちゃっかりロックオンの分まで食べていた。 NEXT |