そのまま、レストランで夕食をとって、帰宅する。 先に、ロックオンはお風呂をわかしてくれた。 カナリアが先に入る。 続いて、ロックオンが。 ティエリアとロックオンという二人の存在が、この家で生活しているのが色濃い証のように、お揃いのパジャマが用意されてあった。 カナリアはそれを着る。 「カナリア?もう寝たのか?」 薄暗い寝室の明かりを、そっとロックオンがつける。 「ロックオン。カナリアが天使の証・・・・キスして?」 カナリアは、パジャマの上の部分だけ脱いでいた。上のパジャマは、完全に脱いだわけではなく、腕のあたりで留まっている。 金色の目を輝かせる。 ぽっと、薄暗い闇の中で、ティエリアの肩甲骨に天使の翼をイメージした紋章が現れる。 それに、ロックオンはカナリアを抱きしめて、まるで聖痕(スティグマ)に口付ける聖職者のように、ゆっくりと口付ける。 何度も、繰り返し口付ける。 何度も、何度も。 カナリアは、辛い体験の記憶を失ったわけではないのだ。ティエリアのかわりに、持っているのだ。全ての辛い出来事の記憶を。 カナリアは震えていた。 ついには、泣き出した。 「カナリア・・・・」 「ロックオン。愛してるから。カナリアのこと、忘れないで。愛してるから、忘れないで・・・・カナリア、汚れまくってるけど・・・でも、ロックオンのこと愛してる」 「俺も、愛してるよ、カナリア。こんなにも綺麗だ。汚れてなんかいない」 カナリアの流す涙を手でぬぐって、瞳にキスをする。 石榴色の瞳は、カナリアの色のような金色。 とても綺麗な金色。 カナリアは、首に今日もらったカナリアの羽のペンダントをつけていた。 カナリアはパジャマをロックオンに着せてもらう。 一緒に、抱きしめあって、ゆっくりと横になる。 カナリアの笑顔。 とても透明で眩しい、本当の天使のような笑顔。 綺麗すぎて、涙が零れそうになる。 人は、こんなにも美しい表情ができるのかと、驚く。 たどたどしく、カナリアがロックオンにキスをする。 本当に、とてもゆっくりと。 まるで、幼子がするようなキス。 「カナリアの翼・・・きっと、ロックオンの愛で溶けたんだね」 「ああ、そうだな」 ベッドに寝転びあって、互いを見つめる。 体をつなげることはしない。それが、二人の中の約束ごと。 だって、ロックオンが一番愛しているのはティエリアだから。 カナリアもティエリアであるが、別人格である。ティエリアからロックオンを奪うようなことはしたくない。 一緒にいるくらいなら、きっとティエリアも許してくれるはず。 「カナリア・・・・どこかで、いつか違う時に・・・・」 「今は、言うな」 唇を塞がれた。 「ん・・・あ・・・」 涙が零れる。 愛されるって、なんて素晴らしいんだろう。 カナリアとロックオンは、互いを抱きしめあいながら、深い眠りについた。 NEXT |