「アニュー。今でも愛しているよ」 ライルは、戦いが終わった後、家族の墓の近くにある、ティエリアが作ったニールの墓の隣に、ひっそりとアニューの墓を作った。 戦場で、散ってしまったアニュー。 自分はイノベイターであるのだから、人間と愛し合えないといっていた。でも、ダブルオーライザーの光にまみれた世界で、アニューはライルに会いにきてくれた。 どうして、お互いが触れ合えるほどに近くにいるのかなんて、そんなことどうでも良かった。 アニューが、傍にいる。 アニューは、イノベイターとして生まれてよかったといっていた。ライルと出会うことができたから。結果がどんなものであれ、アニューがライルを愛した心は・・・そう、真実だったから。 アニューは、確かに自分の意思でコックピットから出てきて、ライルのほうに行こうとしていた。その瞳が金色に輝いていたのは知っている。それでもいいと、思った。 愛したアニューになら、この命が散ってもと。 刹那が、ライルのかわりに引き金をひいた。 ライルは、刹那を何度も殴った。刹那は唇をきって、血を流しながらも、何度もライルに殴られた。 ティエリアは、止めろと口ではいったものの、刹那とライルの気持ちを思って、二人を止めれずにいた。 刹那は。 刹那は、ライルを救ったのだ。 でも、それをライルは望んではいなかった。あのまま、アニューにと、望んでいた。心のどこかで。 神様。 どうして、愛し合う二人は、幸せになれないのでしょうか。 ライルはカトリックだ。普通の人に比べて、信仰心は薄いが、それでも神はいるものだと信じている。 神様。 どうして、アニューを連れて行ってしまったのですか。俺ではだめだったのですか。 アニュー。 最後は、とても綺麗な笑顔で微笑んでいた。 それだけでも、救いかもしれない。 何年たっても色褪せることのない気持ち。今まで何度も女性と付き合ったことがある。顔と容姿に恵まれていたせいで、女性に不自由したことはない。でも、アニューのような純粋な存在ははじめてだった。 カタロンの構成員でありながら、CBに入ったことに感謝さえした。 初めて出会ったとい、いい女だな、と思った。 でも、戦場にいる中で、まさか恋心が芽生えるとは思っても見なかった。 僅か数ヶ月間の間ではあったけれど、とても癒された。 この幸せがずっと続くのだと、思っていた。 そう思いたかった。 アニューがイノベイターであるということが分かっても。 自分を拒否しても。 アニューは、俺を愛してくれているのだと。 アニューは・・・・ライルにとって、全てだった。 全て。 それを、神様は奪ってしまった。 他のどんなものでも、奪われても構わなかったのに。 なぜ、アニューなのだろうか。 アニューは、私物も少なく、ブルーサファイアの忘れな草の髪飾りが、一番の形見となった。 それは、ニールが愛したティエリアにあげたもの。 それを、ティエリアがライルにあげ、ライルがアニューにあげたのだ。 アニューとティエリアは不思議と仲が良かった。多分、イノベイター同士であるせいもあったのかもしれない。 後で聞いたことだが、ティエリアはアニューがイノベイターであると気づいていたという。 ならば、なぜ知らせてくれなかったのだと責めた。 でも、イノベイターであることを分かったところで、ライルにはどうすることもできなかっただろう。 まるで、籠の中に小鳥を閉じ込めるように、アニューの自由を奪うことしかできなかっただろう。アニューにそんなことができるはずがないのに。 「ライル・・・・」 墓に、アニューが好きだった花を捧げると、ふと背後から聞きなれた声が聞こえた。 「ティエリア・・・・」 「あなたも、まだ愛しているんだな」 アニューの墓をじっと見るティエリア。 「ああ。ずっと、愛している。いまだって、こんなにも・・・・・」 ライルは、涙をあれ以降零さなくなった。 アニューが死んで、一生分の涙を零してしまったのだ。 「私も、アニューが好きだった。あなたとアニューには、どうか幸せになって欲しかった・・・・」 ポツリと、ティエリアがもらした。ティエリアは喪服に身を包んで、白い薔薇の花束を二つもっていた。 それを、ニールの墓とそれに隣にあるアニューの墓にそえる。 「神様って、残酷だな」 「私は・・・神を、信じてはいない。でも、いるとすればとても・・・・哀しい試練を人に与えることしかしないと、思う」 「そうだな・・・・」 ライルは、首にぶら下げたアニューの髪のアメジストの十字架を、アニューの墓に置いた。 NEXT |