「あなたは・・・・もう一度・・・・世界が、始まるというのなら、アニューをまた愛するか?」 「どういうことだ?」 「もう一度、アニューと出会えるのであれば、全てを捧げても、アニューを愛せるかと聞いている」 「そんな質問・・・・答えは決まってるだろ。YES。それしかねぇ」 「そうか」 ティエリアは安心したように、青空を見上げた。落ちてきそうなスカイブルー。紺碧。どこまでも広がって、広がって・・・・。 「兄貴とは、上手くいってるのか?」 「ああ」 ティエリアが着ている服は、全て兄であるニールが買い与えたものだろう。 「ライル・・・・よお、たまには俺たちの家に来いよ」 ずっとアニューの冥福を祈っていると、ライルは自分とシンメトリーを描く、実の双子の兄であるニールに声をかけられた。 ニールは、死んだものと思っていた。そう、確かにニールは死んだ。でも、ティエリアの兄弟であるリジェネ・レジェッタが密かに死んだはずのニールを救い、地上で最先端技術を駆使して・・・息を吹き返したというか、イノベイターの細胞にして、もう一度作ったというか・・・・。 それを聞かされて、ライルは笑顔になった。 一度は愛したティエリアが、幸せになってくれるのなら、こんな嬉しいことはない。 確かに、ライルはアニューに出会う前、アニューと愛し合う前、ティエリアのことを愛していた。同じ兄が愛した相手を愛するという、皮肉を描きながら。 そして、ティエリアはライルを選ばず、刹那を選んだ。 ティエリアはニールを愛したまま、刹那を愛した。 そして、結局刹那はマリナ姫を選んだ。いや、正確には二人両方を選んだ。東京で、マリナ、刹那、ティエリアは家族のように暮らしていた。 そこから、ティエリアは去っていった。自分の意思で。 ニールの生存を知るまで、ティエリアは亡霊のようでもあった。何度も出会ったけれど、いつも哀しい目をしていた。そんなティエリアの隣には、いつもリジェネがいた。 リジェネは小悪魔のような性格で、ティエリアとはある意味正反対だ。 リジェネはティエリアを愛しているといいながらも、その手で汚すような真似はしなかった。そしてある日、桜が満開の日に、ニールと引き合わせた。 今は、ティエリアとリジェネの家に、ニールが一緒に住むというような形を送っている。 「自分の墓を自分で墓参するってのも変だよな」 「私にとって、この墓は・・・・今では、あなたに再びめぐり合うまでの、大切な思い出の墓標です」 ティエリアは、綺麗な笑顔でニールと並ぶ。 そう、アニューもこんな綺麗な笑顔をよくしたっけ。 石榴色の瞳は、アニューと同じだ。 「私は、今幸せです。ニールがいて、そしてリジェネにも愛されている」 「勿論。誰が、獣のニールなんかに、愛しいティエリアを渡すか!」 突然現れたリジェネが、手にハリセンをもちながら、ニールの頭をばしばしと叩く。ニールは、リジェネの額にキスを落とす。 「この獣!」 リジェネは、紅くなって子供みたいにニールの腕から逃げ出して、ティエリアの背後に回った。 「本当に、幸せそうだな」 ライルは、眩しく三人を見つめる。 愛する人をとりもどしたティエリアは、とても美しい。昔から美しかったが、その何倍も美しく輝いている。女神よりも美しい。 「あなたには、もう一度アニューと出会っても、最後まで愛しぬける覚悟はありますか?」 サラサラと、桜が風に舞う。 ライルは、頷いた。 「あるに決まっている」 「そうですか。・・・・・・・・・リジェネは・・・・ニールだけでなく・・・・」 その言葉に、ライルは耳を疑った。 NEXT |