「まさか、アニューを?」 ライルが、信じられない表情で、ティエリアの隣にいるリジェネを見る。 リジェネは、悪戯っぽい表情で、言葉を出す。 「ニールを、生き返らせる過程で・・・・あるサンプル体をいじっていた。リボンズの屋敷の地下に、僕や他のイノベイターが生み出された秘密の研究所があってね・・・・そこに、いたんだよ」 ライルは、心臓がドキドキと高鳴るのを感じていた。 「いた、とは?」 「君が愛した女性・・・アニュー・リターナと同じ姿をしたイノベイターが、眠っていたんだよ。どうしようかと思ったよ。処分されるはずだった研究所からこっそり連れ出して、ニールを眠らせたカプセルの隣にいれて・・・・どうしようかと。目覚めても、アニュー・リターナと同じ姿をしているだけで、そのイノベイターはアニューじゃない。僕は、実験を続けた・・・・今も、眠ってる」 「会わせてくれ!」 ライルは、すぐさま口に出していた。 「いいの?君が愛したアニューではないんだよ?別人だ」 「それでも・・・・もう一度、愛せるなら・・・・」 「ニールの双子の弟であるライル、君はティエリアを愛してくれた。ティエリアは君に愛され、幸福でもあった。・・・・君の願い、聞き届けた」 「私も、一緒にいく」 「俺もいく」 ニールとティエリアが、声をあげる。 「そういうと思った」 リジェネは、もう使われなくなったイオリアの研究所に、三人を案内した。 「こんなところに、研究所が・・・・」 上には、有名な大学がある。 そんな地下に、イオリアの研究所があるなんて、誰も気づかないだろう。 「そうか、ここに・・・・」 ティエリアは、イオリアの研究所をいくつか把握している。 その研究所は「エヴァの胎内」と呼ばれた。 いくつものイノベイターが、そこで生れてきたのだ。いわゆる、人工的に命を与えられる場所。 エヴァの代わりに、イオリアがイノベイターを作る。 「ライル」 ニールが、自分の弟を抱きしめた。 「兄さん?」 「お前も、もちっと自分の生き方に、幸せに貪欲になれよ」 兄の手は、とても暖かかった。 リジェネが、小悪魔のように、ライルとニールに囁く。 「幸せに・・・・ね。僕はティエリアの幸せしか考えていないよ。ライル、君の顔をみると、ティエリアが哀しがるから・・・・こうしたにすぎない。僕にとって、君の存在なんてはっきりいって、ニールに比べるとどうでもいい存在なんだけど・・・・でも、せっかくサンプル体があるんだし、ね」 リジェネが、ゆっくりとライルの手をとって、奥へ奥へと歩きだした。 ニールとティエリアも、後ろからついてくる。 NEXT |