コポポポ。 金色の羊水の中で、アニュー・リターナと全く変わらぬ容姿をしたイノベイターは眠っていた。 「アニュー!!」 ライルが、リジェネの静止も無視して、アニューのカプセルに張り付いた。 「アニュー、アニュー」 名前を呼ぶと、アニューと同じ姿をしたイノベイターは、目を薄っすらとあけた。 石榴の色の瞳。漂う薄い紫の髪。どこからどうみても、ライルが心から愛した女性、アニューだ。 「僕が・・・・していた実験は、イノベイターを人間にすること。ニールのときとは逆だね。彼女の体の構造はほとんど人間だ。もう、イノベイターではない」 アニューと同じ・・・いや、アニューは石榴色の瞳を見開き、カプセルごしにライルとキスをする。 「アニュー、愛している」 ライルは、エメラルドの瞳からいくつもの涙を零していた。 リジェネが、スイッチを押すと、ザァァァと、金色の羊水が流れ出る。 アニューが、ゆっくりとリジェネの傍に立つ。 裸であるアニューを包むように、ティエリアはアニューの体と髪をふき、バスローブを着せた。 「ア、ニュー?」 アニューは怯えた様子で、リジェネの背後に隠れた。 「あなたは誰?」 その言葉に、打ちのめされた。 そう、このアニューは、ライルが愛したアニューではないのだ。 そう、リジェネも言っていたではないか。 でも、それでも・・・。 もう一度愛せるなら。 「俺は、ライル・ディランディ。アニュー、お前を世界で一番愛する男だよ」 「私は・・・アニューという、名前なの?」 アニューは困惑しているようだった。 近寄ってくるライルに震えている。 ライルは、それでも・・・アニューを捕まえると、抱きしめた。 「もう、離さないから・・・・」 「あなたは、誰?」 リジェネが天井を仰いだ。 目覚めたばかりのアニューに、ライルは深くキスをした。 「いやっ!」 アニューは暴れて、ライルを引っ掻くと、リジェネに助けを求めた。 ライルは、絶望的に、床に膝をつく。 「プランNO1230って・・・・ちょっと、ティエリア!」 リジェネの静止も無視して、ティエリアはアニューを別のカプセルに入れると、隣にティエリアも入り、プランNO1230を起動する。 「こうなると思ったんだ・・・だから、ティエリアを連れてきたくなかったんだ!」 リジェネが、カプセルの中に入ったティエリアのカプセルを叩く。 「プランNO1230って、なんだ?」 ニールが聞くと、毒を吐くように、リジェネがきっとニールを睨む。 「精神存在となって、相手の心にもぐりこむ・・・危険なプランだ。失敗すれば、ティエリアの心が壊れる」 「なんだって!ティエリア!!」 「もう遅いよ。発動してしまっている。今は、待つしかない」 ニールもリジェネも、そしてライルもただ祈るしかなかった。 NEXT |