(アニュー・・・還っておいで、アニュー) 優しい声がして、アニューは心の中で目を開ける。 (あなたは、誰?) (私は、ティエリア・アーデ。君と同じイノベイター) (さっきの人は・・・?見ていると、とても心が痛んで・・・・) (僕の記憶を、君にあげる・・・・) (どうして?) (僕の中にあるアニューを君にあげる) (そんなことをしてしまえば、あなたが壊れてしまうわ) (大丈夫、僕は壊れない。ニールとリジェネがいてくれるんだもの・・・・) (どうして・・・・あなたの心は、こんなにも強いの?) ティエリアの心に触れたアニューは涙を流した。 ティエリアが味わった全ての孤独に触れる。 (それは、人を愛しているから) (人を、愛して・・・・) (アニュー。還っておいで。もう一度、やり直そう) (この・・・記憶の中にいるのが、アニュー?私?) (そう。この記憶の中にいるのが、本当の君・・・・) (私・・・・ああ、誰かを愛していた) ティエリアは、アニューを優しく包み込んだ。 (君は、ライルを心から愛していた) (ライル・・・・ライル、ライル・・・・) アニューの心は、真っ白だったものから、忘れな草の花畑に移る。 (でも・・・私は、アニューじゃない。本当のアニューじゃない。ライルを哀しませるだけ・・・) (それでも、ライルは覚悟があるといった。最後まで、君を愛しぬく覚悟があると・・・・) (私を、愛しぬく覚悟・・・・) (そう。還っておいで、アニュー。もう一度、愛されるために。もう一度、やり直すために) ライルは、カプセルにはいったアニューを見つめて、カプセルにはりつく。ニールは、ティエリアを心配して、ティエリアが入ったカプセルにはりついた。 「ティエリア・・・・いくらなんでも、無茶しすぎだよ」 リジェネは、精神連結をしてしまった二人を引き離すこともできず、ただ成り行きを見守るしかなかった。 そのまま、丸一日が経過した。ライルもニールも食事も眠ることもせずに、愛しい人が目覚めるのを待っている。 ランプが、青に光った。 「よし」 リジェネが、複雑に暗号を入力する。 まずは、カプセルに後から入ったティエリアが出てきた。 ぼうっとしていう。 「おい、ティエリア?」 ニールが揺さぶろうとするのを、リジェネが止めた。 「まだ、精神連結の余韻が残ってる。ティエリアは、このまま眠る」 「ニール・・・・愛して、います」 ティエリアは、ニールの腕の中で意識を失った。 「次は・・・」 リジェネは、アニューのカプセルをあける。 アニューは、石榴色の瞳で、誰かを探しているようだった。 ティエリアのほうにいっていたライルに、アニューはかけだすと、後ろから抱きついた。 リジェネは、イオリア研究所の全システムを二人に向けさせた。 結果は・・・。 ライルは、ゆっくりと振り返る。 「私は・・・・アニュー・リターナ。もう一度、愛してくれますか?」 その言葉に、ライルはアニューを抱きしめていた。 NEXT |