「覚悟があったから、引き金をひいた」 「覚悟があったから!?だからアニューを殺したっていうのか!アニューは、アニューはおれたちの元に、また戻ろうとしていた!!」 「彼女はイノベイターだ。戻ってきても、またいつ意識を支配されるか分からない」 「だから殺したっていうのか!」 「弁明はしない」 何度も、刹那は殴られる。 「止めろ」 ティエリアが叫ぶ。 ライルは何度も刹那を殴る。やがて、刹那は何も口にしなくなった。 切った唇から、真紅の血が滴り落ちる。 ライルは手加減もなしに、刹那を殴りつける。 ティエリアは、口では止めろと叫ぶが、二人を体をはって止めない。 やがて、刹那を殴る手は、壁を殴りだした。 嗚咽。 「アニュー。あああああぁぁぁぁぁぁ!!!」 ズルズルと、刹那はその場にしゃがみこんだ。 ライルは、虚ろな瞳に涙を溢れさせて、自室ではなくアニューの部屋に向かって、宙を蹴る。 「こんなの、信じられるかよ・・・アニュー、どこだ、アニュー?」 ティエリアは、見ていられなくなって、部屋を抜け出した。 神など、この世界のどこにもいないのだ。 何を・・・祈るように、願っていたのだろうか。 その結果がこれか。 イノベイターと人間であったアニューとライルは分かり合えていた。だが、アニューはイノベイターであるが故に他のイノベイターに支配されていた。 あの時。 刹那が引き金を引かなければ、アニューの機体はボロボロになりながらも、ライルを確実に仕留めただろう。 アニュー。 ティエリアは、涙をこぼして宙を見上げる。 同じイノベイターだった彼女。どうか、ライルとの愛を謳歌してほしかった。幸せであって欲しかった。 「君は、本当に・・・・なんでも自分で背負おうとする」 救急キットを手に、ティエリアは殴られ腫れ上がった刹那の手に氷水をもたせていた。 「染みる・・・・」 「これくらい我慢しろ。君の心を見ている僕のほうが染みる」 少し乱暴に治療する。 「俺は、間違っていたとは思わない」 「君は、間違ってはいない。引き金をひく覚悟が僕やアレルヤには足りなかった。それだけのことだ」 「俺は・・・・・でも、仲間を殺した」 「ならば、僕は仲間を見殺しにした」 「ティエリア」 「ライルはしばらく荒れるか・・・放心するか。多分、後者のほうだろうな。君を選んだ、といっても僕はライルを悲しみから救ってやりたい。ただのエゴなのは分かっている。でも、君がしたことの大きさの、そう、僕は共犯者だ」 「共犯者?」 刹那が、腫れ上がった頬に氷水を当てなおす。 「僕は・・・・アニューが、イノベイターであると気づいていた」 「それ、は」 「気づいていながら、誰にも教えなかった。アニューは自分の意思でライルと愛し合っていたから。仲を裂きたくなかったんだ・・・・それが、この結果に繋がった。僕のせいでもある。無理やりでも、アニューをどこかの基地でおろしておけば良かった」 「俺たちを受け入れてくれる基地なんて・・・・」 「それでも、CBの基地では補給もできた。4ヶ月もの間、補給もなしで漂っていられるはずがない」 「ライルが、それを許すはずがないだろう」 「そうだろうな」 ライルとアニューは強く結びあっていた。とても愛し合っていた。どちらかがかけても、だめなのだ。 NEXT |