ラブファントムU「愛しているって囁く」







「ん・・・・・・」
「すまない、起きたか?」
移動させて、ソファーベッドに寝かせたとき、ティエリアがゆっくりと目を開けた。
「愛してる・・・・」
寝ぼけているのか、それだけ呟くと、また眠ってしまった。
刹那は、ベッドからタオルケットを持ってくると、ティエリアにかぶせてやった。

「ばうわう」
がじがじ。
隣のソファーに座ったところで、セントバーナードのアズラエルのでっかい口に頭をかじられた。
たり・・・・とよだれまみれになって、刹那も焦る。
「ごめん、今ご飯あげるから」
刹那が、ティエリアのかわりにアズラエルと猫のマリアとイフリールの分までご飯をあげた。
三匹とも元気にエサを食べていく。
余程おなかがへっていたのか、ペロリと平らげてしまった。
そういえば、ティエリアは昨日の昼からAIのプログラミングに熱中していたっけ。仕事に熱中しだすと、休憩さえしないティエリアだ。昨日もエサをあげ忘れたのだろう。

水もからっぽだ。
水道水ではなく、ペットショップで販売している犬と猫用の水をあけて専用の器にいれると、三匹とも水を飲んでいく。
足りなさそうなので、もう少し余分に刹那はエサをあげた。
それも三匹とも綺麗に食べてしまう。
ちょっと、ティエリアに注意しといたほうがいいかと思った。ペットを飢えさせるような真似は無論、二人とも好きじゃない。ペットであると同時に、三匹とも家族の一員なのだ。

「ロックオン・・・・・・」
ティエリアが、小さく寝言を呟く。
刹那は優しい顔になる。好きな相手が、他の男の名前を出しても、刹那は決して責めない。刹那は恋愛方面で疎そうに見えて、とても器の大きな男性だった。
「ちゃんと、届いている。ロックオンに、愛していると」
長くなって、腰まであるティエリアの髪を撫でる。

「バウワウ」
セントバーナードのアズラエルが、またがじがじと刹那の頭をかじった。
このくせ、なんとか直せないかなとか思ったりした。
「くーん」
リードを持ってきた。
散歩に連れて行ってくれといっているのだ。
室内で飼うには、大型犬は大きすぎる。それでも刹那とティエリアの家は、日本の東京、という土地価格の高い場所にしてはかなり広いほうだ。
鎖につないで、外で飼うのは刹那もティエリアも嫌いだった。
日本は四季があって、冬は寒くて夏は暑い。そんな気候の中にペットを放り出しておきたくない。
それに一軒家だし、本当はローンを組んでいて、年間に支払われるガンダムマイスターだった者へのCBの三千万円という年金を頼りにして、家を購入した。時価、二億3千万円。いわゆる金持ちが住む高級住宅の一画に刹那とティエリアの家はあった。10年かけて三億年金が入ってくれば、それでローンは完全に支払えるはず・・・と、ティエリアの年金は考えなしに家を購入したのだが、ローンを組んでいるとティエリアに話したら、ティエリアは次の日には全ての返済を済ませていた。
AIの特許権などを持っており、年収が100億あるらしい。
ええと。百億ってなんですか?刹那には実感が湧かなかった。ティエリアは空いていた隣の家も購入して改築工事を行い、今の家にしてしまった。ようは、高級住宅2件分の広さがある。
大型犬でも、これだけ広さがあればある程度は歩き回れる。

「散歩に行くか」
「僕も行くよ」
ティエリアが起き上がる。
「ここまで連れて帰ってきてくれたんだね。ありがとう」
長く伸びた紫紺の髪がサラサラ揺れる。昔は肩あたりまであったが、ずっと切らずに伸ばしているせいで、今は腰をこえてしまった。
「ティエリア、髪は切らないのか」
その言葉に、ティエリアが固まった。しまった、と刹那は思った。ティエリアの心の傷に触れてしまったのだ。

「ん・・・・もう少し、伸ばす。切る、覚悟がないんだ。あの人が・・・伸ばしてくれと。でも、いい加減うっとうしくなってきたし、今年の夏にでも切るよ。そうだね、ザックリと。どうせなら、刹那よりも短くしたい」
「ティエリアは、少し長い方が似合っている」
「じゃあ、肩くらいで揃える」
二人は、キスを交わすと、抱きしめあう。
「愛してるよ、刹那」
「愛してる、ティエリア」

「くぅーん」
アズラエルが、早く散歩につれてっていってくれと、二人に体当たりした。
猫のマリアとイフリールは、すにで猫用の出口から外に出て散歩にいってしまった後だった。





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