p>ティエリアは着替えた。 ユニセックスな服に。もう、ご近所さんもみんなティエリアのことを女性だと思っている。 契約している会社の社員ですら、ティエリアのことを女性と思っていた。 誰も、性別のない無性であるだなんて思いつきもしない。 ボーイッシュな女性、といつも誰もがとらえた。 「準備いいよ。行こうか」 サマーセーターに、ある意味ギリギリな半ズボンをはいたティエリアに、待ったの声がかかった。 「刹那?」 「もう少し、丈のある半ズボンはないのか」 「どうしたの」 「下着が見えそうな気がして・・・その・・・」 「残念。下着はいつもの男もののボクサーパンツだよ。色気なんてありません」 「いや、やっぱりだめだ。着替えてこい」 「はいはい」 ティエリアは素直に従う。 自分がどんな格好をしているのかよく分かっていないのだ。下着が見えそうなギリギリラインの半ズボンをはいてもティエリアは何も感じない。よく少し大きめの刹那のTシャツ一枚で、うっかり外に出てコンビニに出かけてしまい、店員の鼻血に気づいてまたやってしまったと、遅まきに気づく。 「これなら文句ないかい」 ここで、ティエリアも意地悪に出た。 フリフリラインのミニスカートだ。ふわふわしたデザインでフリルやレースに彩られ、風で少しでも翻れば、今にも下着が見えそうだ。 さっきの半ズボンとどっこいどっこいだ。 「かわいいのでよし」 刹那のOKのラインもどこか変だった。 そのまま、刹那とティエリアとアズラエルは外に出る。 ちゃんと鍵をかけたかを確認する。 そして、アズラエルのリードをティエリアが持って、その横を刹那が歩く。 いつもの散歩道。 「そういえば、ライルからメッセージカードが届いてたよ。アニューとの間にまた子供ができたんだって。今妊娠3ヶ月目らしい」 「へぇ・・・もう四人目・・・結婚して、まだ三年なのに四人目。十年後にはどうなってるんだろうな」 ライルとアニューは、いわばできちゃった結婚であった。もともと近々結婚する予定で婚約も正式に交わし、同棲していたのだが、一人目ができてしまったことで結婚は早まった。 「電話で聞いたけど・・・・野球チーム作るって。本人本気だよ。ライルって結構絶倫かも。でも、いいな」 「何が?」 桜の木が並ぶ通り道を通る。アズラエルが木の前でとまって、きばりだした。 スコップとビニール袋を取り出した刹那。 ひらひらと降る桜。 うんこをきばる愛犬。 ・・・・・・・・・。 ムードは台無しだ。 「ちょっと、次の時にいう」 ティエリアだって、流石に愛犬がうんこをきばっているときにいう台詞じゃないと思った。 アズラエルのうんこは長かった。 「わふ」 「わふじゃないよ。さっさとしなさい」 「わふん」 愛犬の頭を撫でて、ティエリアは桜を見上げた。 ちなみに、通りかかったサラリーマンが、ティエリアのほうをしきりに気にしていて、風にスカートが翻り、「お」という顔をしたが、ボクサーパンツにがっくりと肩を落としていた。 NEXT |