p>「ひっく、ひっく・・・・」 ティエリアは、すぐ近くの公園のベンチに座って子供のように泣いていた。 さっきまで、あんなに幸せだったじゃないか。 刹那の子供が欲しいと、CB機関で無駄と知りながら検査まで受けて。 刹那と、ずっと歩いていけるのだと、無条件に信じていた。この幸せがずっと続くのだと。 パサリ。 「あ」 「泣くなよ、かわいい顔が台無しだぜ、お嬢ちゃん」 ニールが、着ていた上着をティエリアの頭に被せたのだ。 「ニール!」 もう、分からない。 自分の未来も、何もかも。 ティエリアは泣きながらニールを抱き寄せると、深いキスをする。 答えてくるそれは、昔のニールそのもの。 「ニール、愛しています」 「俺も、なんかティエリアだっけ?あんたのことが愛しい。昔、凄い愛してたような、そんな気がする」 「ペアリング、そのままなんですね。きっと、あなたは僕が愛したニールだ。刹那にはマリナ姫。僕にはあなた・・・一番平和的な終わりなのかもしれない」 刹那を愛している。 そう、刹那をティエリアは愛していた。 でも、もうこの心はいらないんだ。 「あなたは、ニール・ディランディ。僕の恋人です」 「え。恋人?」 「そう。あなたは、僕と一緒にガンダムに乗って戦った。そして、戦場で死んでしまったはずでした。でも、生きてた。生きてた。生きてた・・・・」 「おいおい、そんなに泣きなさんな」 「私は、あなたを作り出した。それくらい、あなたを愛していた・・・・・」 「作り出したって・・・・今有名な、人工生命体?」 「そうです。私も、人工生命体です」 「なんか穏かじゃないな」 「やり直しましょう、ニール。あなたと、もう一度この世界で。愛の奇跡を」 「愛の奇跡を、白いキャンバスに?」 「覚えてくれているんですか?」 「断片的に。言葉とか」 桜の花びらが散っていく。 「髪、伸ばしすぎじゃないか?」 ベンチからたれて、地面にまでたれてしまった紫紺の髪を、ゆっくりとニールが撫でる。 「あなたが、伸ばしてくれというから、伸ばしたんです」 「いや・・・・綺麗だけど、汚れたりしたらもったないない。腰のあたりで切るとか」 「そうですね。切ってしまいましょう。もっと、もっと短く」 「マリナ、俺は・・・・」 「時間がないの。せめて、日本にいる間だけでも、あなたの傍にいさせて」 「分かった。でも、あのニールは本物なのか?」 「それは、私には分からないわ。中東の病院で見つけて、保護したの。記憶喪失で、彼が入院していた病院や保護した民間宇宙船の話を聞いている限りでは、本物のニール・ディランディさんとしか」 「そうか・・・・まずは、ニールとティエリアと話がしたい」 「ダメ!」 「マリナ?」 「だめよ。あの二人は、二人で幸せになるの。そして、私たちはやり直すの」 半日がたった。ティエリアは戻ってこない。 「遅すぎる。ちょっと、探してくる」 「待って、刹那!」 「すぐに戻るから!」 鍵は二人とも持っていたし、何かのためにティエリアは身分証名称も財布も持っていた。 近くの公園に刹那はやってくる。 そこには、桜に埋もれたメモがあった。 書かれた文字は。 「さようなら」 NEXT |