ラブファントムU「悪魔がくるよ」







それは、後から知った話だった。
ニールのアンドロイドが、僕と滞在しているホテル名を書いて、刹那の住所を書き、切手をはって勝手に投函したのだ。


ティエリアが投函したと思わしきポストの近くには大きな郵便局があり、ティエリアの手紙はそこで捺印をおされた。
その近くのホテルを探し回り、聞き込みを続けていた刹那は、自分の家のポストに投函されていた宛名のない手紙を受け取る。
手紙の内容は、簡素なものだった。
(もうすぐ悪魔がくる。天使を助け出せ)
その続きに、所在地が書かれてあった。

悪魔とは、リジェネのことだろう。
「ここに、ティエリアが!」
マリナは、公務もあり、もう出国してしまった。
あとは、刹那が一人で頑張るしかなかった。CB機関を無理に動かして、大沙汰にしたくない。

ピンポーン。ピンポーン。
何度も鳴らされるコールルームに、ティエリアが目覚める。
「はい?」
ニールも起きる。

ドアを開けると、そこに自分とシンメトリーを描く絶世の美貌があった。
「ここをあけてよ、ティエリア。ねぇ、愛してるよ。さぁ、一緒に行こう」
「リジェネ!どうしてここが!」
ティエリアは、すぐにドアを閉めた。
そして、もしもの時のために所持していた拳銃を持ち出そうとして、ニールが所持しているのに気づき、安堵する。彼がいてくれる。
僕を、リジェネから守ってくれる。

「ねぇ、ティエリア。僕からのプレゼント、気に入ってくれた?とても幸せだったでしょ?幸福だったでしょ?君の脳にばれないように接触して、ニールの性格を再現したんだから。記憶も一部再現してあげたよ。彼は、アンドロイド。人間に忠実にできているでしょう。そっくりでしょ?」
「そ、んな。ニール?」
ティエリアは、石榴の瞳から大粒の涙を零した。
ニールが持った拳銃は、間違いなくティエリアの方を向いていた。

「どうして、ニール!」
ティエリアは絶叫した。
ドアをこじあけて、リジェネが入ってくる。

ガタガタガタガタ。
ティエリアは恐怖で震え上がった。

「嫌、こないで!」

リジェネに無理やりレイプされた時の記憶が蘇る。

「こないで!いや!いや!」
「愛してるよ、ティエリア。傷つけないから。逃げ出さないよう、今度は大きな籠に入れてあげよう。そこで、僕だけのためにカナリアのように歌って」
「嫌!」

足が笑っていた。
ニールは、ティエリアのほうに向けていた拳銃を、リジェネに向けて威嚇射撃をした。
「ティエリア、逃げろ!」
「ニール!?」
「この、からくりの分際で、創造主を裏切るきかぁ!」
リジェネが腰から銃を抜き、ニールに発砲した。
「ニール!ニール!!」

バチバチ・・・・・。
火花が散った。
傷口からは、血はでない。

「嘘」

「だからいったでしょ、ティエリア。彼は、アンドロイドだって」
ニールの傷口から散った火花が、ぽっとベッドに火種をつくり、見る見るうちに部屋が燃え出す。

「逃げろ、ティエリア!」
「嫌だ、あなたも!」
ニールは、リジェネの足を撃ちぬいた。
「くそ!」
リジェネが、痛覚を遮断して、自分の意思で出血を止める。

ティエリアは、ニールを抱えて、非常階段を登った。





NEXT