「ティエリア。愛しているから。大人しく、こっちに着なさい。傷つけたくないんだから。さぁ、早くこっちにきなさい」 「いやだ!誰が君なんかと!」 ティエリアは、ニールの体を抱えながら、逃げる。 「ティエリア。俺のことはいいから、逃げろ」 「嫌だ!アンドロイドでも・・・見捨てたり、できない。僕を助けようとしてくれた。あなたはニールの魂を、何処かにきっともっているんだ」 重いニールの体をかついで、走る。 ホテルの3階を走りまわり、4階、5階へと上がっていく。 「いいから、行け!」 ニールが、走ることを拒否すると、ティエリアは泣き叫んだ。 「嫌です!あなたも、逃げるんです!!」 「ティエリア・・・・」 ニールは困ったような顔になってから、それからティエリアをぶった。 「うわぁ!」 思い切りぶたれて、ティエリアは壁に吹き飛んだ。 「くそ・・・・体が・・・・ちきしょう・・・」 ニールは、さらに振り上げた手を、拳銃で撃ちぬいた。 「ニー、ル?」 ぶたれた頬をおさえながら見ると、ニールは泣いていた。 「ごめんな。マスターの命令にアンドロイドってのは忠実にできてるんだ。今、あんたを気絶させてもってこいって命令が下った」 「ニール・・・・」 ティエリアは、絶望的にニールを見上げる。 ニールは、拳銃をこめかみにあてた。 「な、にを」 「なぁに。命令を送受信されるのは、脳にある回路の一部だ。ばいばい、ティエリア。愛していたよ。この愛は、創造主の命令じゃなかった。俺の意志だった。お前の言ったとおり、ニールってやつの魂が、ほんの少しだけ俺の体に宿っていたのかもな」 「ニール!!」 ティエリアが叫ぶ。 ニールは、こめかみにあてていた銃の、引き金をひいた。 乾いた銃声と、ティエリアの絶叫が重なった。 「嫌あああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 「追いかけっこは終わりかい?」 「リジェネ!!」 ティエリアは泣き叫ぶと、キッとリジェネを睨んだ。 ニールが持っていた銃を、構える。 ガタガタと体は震えていたし、涙は止まらないけれど。 でも、でも。 ニールの思いを、行為を、無駄になんてできない。 できるはずがない。 「自分で自殺するアンドロイドなんて聞いたこともないよ」 リジェネは、ニールを蹴り倒そうとして、逆に蹴り飛ばされた。 「なに!?」 「ニール?」 バチバチと火花を散らせながら、エメラルドの瞳が、瞬いた。 火花が止む。 「ティエリア。守るから。そう、9年以上も前に約束したな。こんな場面でごめんな。謝りたいことがたくさんある。いっぱい、お前と愛を語り合いたかった」 「ニー・・・・ル?」 「置いていって、ごめんな。お前のこと、ずっとずっと愛してるから。今は、逃げるぞ!」 ニールに、ティエリアは抱えられた。 ティエリアは信じられない表情をしていた。 神様は、時々、気まぐれに奇跡をくれるって知ってた? ------------------------------- やばい。ボロボロ涙が・・・・ NEXT |