「いいじゃないか。僕だと、実験に失敗して何かあったとき、解毒剤が作れないだろう?」 ティエリアはの理論は、確かに間違ってはいない。しかし、失敗して何かある危険性があるのなら、最初からするなと、つっこみそうになった。 「でもねぇ。僕だって、ティエリアと同じ頭脳を持っているんだよ?君が研究したいというのなら、手伝ってあげるのに。一人より、二人で研究したほうがいいと思わない?」 「それもそうだな」 二人は、揃ってじっとニールを見つめた。 「いや、見つめられても、俺は実験材料にならないから」 「けちな男だな、君は。器が小さい」 吐き捨てるリジェネ。 「ニールにもしものことがあったら心配だし、やっぱりリジェネしか」 じっと、ティエリアはリジェネを見る。 「この、IQ180以上で、すばぬけて頭がよくて、そこらへんの女優よりも美しくて、声も綺麗で、唄も上手くて、年収が10億以上あって、アイドルグループのメインボーカリストで、売れっ子モデルで、おまけに家事まで万能の僕を、そこらの犬や猫や猿や人や千尋やナウシカやハウルのように実験材料にするなんて、酷くない!?」 「なぁ、なんか最後、ジブリの映画のキャラクターまざってなかったか?」 「気のせいだよ」 リジェネは嘆いた。ような芝居をした。 「ああ、僕は悲しい。哀しくて泣いて、涙を零して涙を流しすぎて死んでしまう」 キラリと、気丈なリジェネの瞳から、涙があふれて滴り落ちる。 「リジェネ、そんなに上手く目薬使ってな泣いても、ばればれだよ。僕を騙そうだなんて、101億3千289万3641年と6ヶ月23日足りないから」 「なに、その細かい日数!?」 もはや、ニールはツッコミ役になっていた。 「んー?何、なんか変」 「リジェネ?実験の効果が出たのか!?」 「何・・・・僕はどうなるの・・・・・」 不安そうなリジェネの手を握って、ティエリアは励ます。 「大丈夫、墓はちゃんと建ててあげるから」 「大理石の墓がいいな・・・って何いわすんだよ」 ペシっと、軽くティエリアの頭を殴る。ここらへんはスキンシップなので、ニールもティエリアも怒らない。 「大理石の墓だな。今から、業者に注文するよ」 「リジェネものりがいいな、おい。お前の強烈なファンたちに、私生活見せたらどろどろに幻滅されそうだな。美しきルシフェル、黒き堕天貴公子・・・・この前の雑誌の文字見て笑った。めちゃくちゃ面白かった」 「失礼だな、ニール。僕の崇高なる精神が理解できないこの軟弱こんにゃく人間め!」 ちなみに、雑誌のインタビューや対談もこんなかんじで、二人とも面白おかしいキャラをわざと演じている、と周囲から思われていた。 間違ってます、それ。 ごっつい、天然ですから。天然アホです。バカではありません。あくまで、アホなんです。 そう、バカとは無能な者にも投げられる言葉。アホとは、アホなやつだけに投げられる言葉。至上なるアホ。 二人は、至上なる天然アホだった。 「寒い・・・・」 「ほんとに大丈夫、リジェネ!」 ティエリアが、本気で心配しだして、リジェネを抱きしめる。 リジェネは、いつもならティエリアを抱き返して、ニールに向けて「羨ましいだろ、バーカ」とか言っているのに、今回ばかりは本気でガタガタと震えだした。 「嫌だ・・・・ティエリア・・・・」 「リジェネ、ごめん、僕が悪かった。しっかりして」 ぼふん。 漫画かアニメのように、煙がたった。 「リジェネ・・・・・・・かわいいVVVVVVvvvv」 「な、何これ!?」 「おー。またやったな、ティエリア」 ニールは、爽快にその現場を目撃してしまった。 リジェネは、以前ティエリアがやらかしたのと同じ現象に見舞われていた。肉体の、老化の反対の若返り。 ティエリアの腕の中には、ぶかぶかの服をきた、10歳くらいの、女の子にしか見えないリジェネが立っていた。 NEXT |