世界が終わってもV「怒ったリジェネ」







「この服、試着させてください」
ティエリアが選んだのは、思いっきりゴスロリの女の子用の服だった。
「ティエリア、本気なの?」
「本気だよ。大丈夫、似合うから!」
「いいよ、ここまできたら、僕も男だ、諦めよう。でも、条件がある。これから一ヶ月、僕と一緒のベッドで眠ってね?」
「その条件、のんだ」
「まて、ティエリアああああ!!」
ニールの叫びは虚しく響いた。

「ふ。ご馳走様、ニール」
ニヤリと、リジェネは不適に微笑む。いつものリジェネだ。
「リジェネ!食えないやつめ!」
「僕は転んでも唯では起きないよ。なんといっても、暗黒貴公子リジェネ様だからね」
「はいはい、こっちね」

女性用の試着室で、ティエリアはいざ、リジェネの服をぬがせて焦った。
リジェネの胸は、かすかに膨らんでいたのだ。
「ごめん、ちょっと失礼」
「うわ、うわああああああ!!!」
ティエリアの手が、下肢に伸びる。
「・・・・・・・ない」
「え?」
「金玉がない!!」
ニールが、その叫びにこけた。まさか、ティエリアの口から、金玉なんて単語が飛び出してこようとは。

「おい、大丈夫か?」
子供用の試着室なので、男女が入っても構わないようになっている。
「ねぇ、ニール、ついてないんだ」
「そんなはずないだろう。いくらなんでも」
スカッ。スカッ。
ムニュってした感触がない。
「「やっぱりついてない!!」」
リジェネは、あまりのことに気絶していた。

気絶している間に、リジェネはそれは下着からヘッドフリルまで、可愛く女の子用のゴスロリの服を着せられて、ニールの腕に抱かれていた。
「・・・・・・・ない」
自分でも、探ってみた。でもない。リジェネは泣いた。
女装させられたショックよりも、なくなったことのほうがショックだった。
そう、リジェネは性別が男の子から女の子になっていた。
そういえば、実験のときもティエリアは10歳の女の子になっていたっけ。
これは、女装ではない。女の子が女の子の服をきて、女装なんていわない。
「はははは・・・・もういいよ」
「リジェネ?」
ティエリアが、不安そうな顔になる。
リジェネは、爽快に笑った。
「あはははははは!」
「大丈夫か、リジェネ。ついにおつむに大腸菌がまわったか?」
「誰がそんなものまわるか!」
リジェネの蹴りは、見事にニールの脛に決まり、ニールは足をおさえて蹲った。

リジェネは、キラキラした目で、瞳を瞬かせ、女の子みたいにかわいらしく笑う。
リボンズの隣にいたときは、時折、そんな仕草を強要させられた。「今日はリジェネは女の子だよ」そう言って、一式女の子の衣装を用意され、無理やり着替えされられ、言葉遣いまで女のものを強制させられた。そう、そして女のようにリボンズに扱われ、彼とは肉体関係もあった。愛はなかった。ただの主従関係。表向きは立場は並んでいたけれど、創造主であるリボンズには歯向かえない。だからこそ、反乱をおこして裏切ったのだ。
そのトラウマが、リジェネを決して女装しないというものにかえていた。

「パパ、ママ、あそぼ」
「リジェネ、もっかいいって!」
ティエリアが、ニールからリジェネを奪う。
「パパ、ママ、大好き!」
「僕も、リジェネが大好き」
リジェネを抱きしめて離さないティエリア。
ニールは、微笑ましい光景に最初は穏かな表情を浮かべていたが、リジェネはニールのほうを向くと、ニヤリと唇を吊り上げた。

「僕を怒らせたら、怖いって知ってた?」
ニールにだけ聞こえるように、囁く。
「ママ!パパのことなんて、いつでも構えるでしょ!リジェラは、解毒剤飲んだら、すぐに消えてしまうんだよ。いっぱい遊ぼう!」
リジェネは、自分のことを店で名乗ったリジェラと呼んだ。
「うん、そうだね。ニールなんてほっといて、遊ぼうか」
(ふ、ふふふふふ・・・・・)
かわいい10歳のゴスロリを着た女の子リジェネは、顔にとっても年に似合わない黒い笑みを張り付かせて、ニールのほうをむいて、唇を開く。

「ざまぁみろ」





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