「この服、試着させてください」 ティエリアが選んだのは、思いっきりゴスロリの女の子用の服だった。 「ティエリア、本気なの?」 「本気だよ。大丈夫、似合うから!」 「いいよ、ここまできたら、僕も男だ、諦めよう。でも、条件がある。これから一ヶ月、僕と一緒のベッドで眠ってね?」 「その条件、のんだ」 「まて、ティエリアああああ!!」 ニールの叫びは虚しく響いた。 「ふ。ご馳走様、ニール」 ニヤリと、リジェネは不適に微笑む。いつものリジェネだ。 「リジェネ!食えないやつめ!」 「僕は転んでも唯では起きないよ。なんといっても、暗黒貴公子リジェネ様だからね」 「はいはい、こっちね」 女性用の試着室で、ティエリアはいざ、リジェネの服をぬがせて焦った。 リジェネの胸は、かすかに膨らんでいたのだ。 「ごめん、ちょっと失礼」 「うわ、うわああああああ!!!」 ティエリアの手が、下肢に伸びる。 「・・・・・・・ない」 「え?」 「金玉がない!!」 ニールが、その叫びにこけた。まさか、ティエリアの口から、金玉なんて単語が飛び出してこようとは。 「おい、大丈夫か?」 子供用の試着室なので、男女が入っても構わないようになっている。 「ねぇ、ニール、ついてないんだ」 「そんなはずないだろう。いくらなんでも」 スカッ。スカッ。 ムニュってした感触がない。 「「やっぱりついてない!!」」 リジェネは、あまりのことに気絶していた。 気絶している間に、リジェネはそれは下着からヘッドフリルまで、可愛く女の子用のゴスロリの服を着せられて、ニールの腕に抱かれていた。 「・・・・・・・ない」 自分でも、探ってみた。でもない。リジェネは泣いた。 女装させられたショックよりも、なくなったことのほうがショックだった。 そう、リジェネは性別が男の子から女の子になっていた。 そういえば、実験のときもティエリアは10歳の女の子になっていたっけ。 これは、女装ではない。女の子が女の子の服をきて、女装なんていわない。 「はははは・・・・もういいよ」 「リジェネ?」 ティエリアが、不安そうな顔になる。 リジェネは、爽快に笑った。 「あはははははは!」 「大丈夫か、リジェネ。ついにおつむに大腸菌がまわったか?」 「誰がそんなものまわるか!」 リジェネの蹴りは、見事にニールの脛に決まり、ニールは足をおさえて蹲った。 リジェネは、キラキラした目で、瞳を瞬かせ、女の子みたいにかわいらしく笑う。 リボンズの隣にいたときは、時折、そんな仕草を強要させられた。「今日はリジェネは女の子だよ」そう言って、一式女の子の衣装を用意され、無理やり着替えされられ、言葉遣いまで女のものを強制させられた。そう、そして女のようにリボンズに扱われ、彼とは肉体関係もあった。愛はなかった。ただの主従関係。表向きは立場は並んでいたけれど、創造主であるリボンズには歯向かえない。だからこそ、反乱をおこして裏切ったのだ。 そのトラウマが、リジェネを決して女装しないというものにかえていた。 「パパ、ママ、あそぼ」 「リジェネ、もっかいいって!」 ティエリアが、ニールからリジェネを奪う。 「パパ、ママ、大好き!」 「僕も、リジェネが大好き」 リジェネを抱きしめて離さないティエリア。 ニールは、微笑ましい光景に最初は穏かな表情を浮かべていたが、リジェネはニールのほうを向くと、ニヤリと唇を吊り上げた。 「僕を怒らせたら、怖いって知ってた?」 ニールにだけ聞こえるように、囁く。 「ママ!パパのことなんて、いつでも構えるでしょ!リジェラは、解毒剤飲んだら、すぐに消えてしまうんだよ。いっぱい遊ぼう!」 リジェネは、自分のことを店で名乗ったリジェラと呼んだ。 「うん、そうだね。ニールなんてほっといて、遊ぼうか」 (ふ、ふふふふふ・・・・・) かわいい10歳のゴスロリを着た女の子リジェネは、顔にとっても年に似合わない黒い笑みを張り付かせて、ニールのほうをむいて、唇を開く。 「ざまぁみろ」 NEXT |