禁忌でもいいから「恋人でも友達でもない」







ライルとティエリアは、一緒に暮らしている。
生活の収入はティエリアが頼りだ。ガンダムマイスターであった者には年金が年に三千万出ているが、それらは全て寄付している。
ティエリアは、AI開発に携わり、ガードマンを雇ったほうがいいほどの収入を得ていた。
ライルは、一度はCB期間に勤めだしたものの、一年もせずに辞めてしまった。酒に溺れ、ふらふらする毎日が続く。

容姿がいいことを武器に、女にも溺れた。
でも、どれも恋愛には到らなかった。体の関係だけある、女の家に泊まって、朝がくると家に帰るそんな毎日。
アニューが、忘れられない。

一緒に暮らしていて、ティエリアはライルの生活について、いい加減何か言いたそうだった。
「ライル。女の、香水の匂いがする・・・・職業につけとは言わない。毎日ふらふらする生活は、やめてはどうだ」
食卓で、ティエリアがシチューを口にしながら、そう静かに言った。
ティエリアは食事を作ることができない。他の家事はなんでもこなす。ティエリアの分の食事はライルが作っていた。
「何それ。俺に説教してんのか?」
「そうではない。ただ、もう少し・・・酒も飲みすぎている。医者に、酒も煙草も控えろといわれたばかりだろう」
ティエリアは食事を終わらすと、同じように終わったライルと一緒にソファに座っていた。ティエリアはプログラミングをはじめ、ライルは酒を飲みだしていた。

ティエリアの手が伸びて、ライルの酒を奪う。
「もう、飲むな。昨日浴びるほど飲んで、帰ってきただろう。今日くらいは、体を休ませてやれ」
ライルが家に帰ってこないで、どこの誰かもしれない女の家に泊まることなどしょっちゅうだった。
「ティエリアはさ。どんな姿で、兄さんに抱かれていたんだ」
ライルはいらついていた。

聖人君子のように、収入のほとんどを慈善団体に寄付し、自らも慈善団体に入り、率先して活動するティエリアは、歌声の綺麗さからアルバムも出していた。誰もが、ティエリアのことを「天使」と読んだ。
天使「ミカエル」もしくは「ジブリール」

ニールと同じ姿をした自分がいるから、落ち着いただけじゃないのか。
どうせ、俺の中に兄さんを見てるんだろ?

「その質問に、答える気はない」
ティエリアはプログラミングを止めて、眉を寄せた。
「なぁ。寂しいんだよ。慰めてくれ。あんたには、女の器官があるんだろ?胸なんてなくていいから、やらせてくれよ」
ティエリアを組み敷くライル。
ティエリアは、怯えた様子も見せず、ただ石榴色の瞳でじっとライルを見つめていた。
「僕を抱きたければ、そうすればいい。それで君の気が済むというのなら」
「あんた、さぁ。俺のこと、ばかにしてる?」
ティエリアが着ていたユニセックスな服を破るライル。

「バカになど、していない」
噛み付くように、キスをしてやった。
抵抗は全くなかった。
下着姿にされ、肌も露なティエリアに、ライルは普段女を抱くような真似をしかける。
でも、抵抗は一切ない。
「君は、ニールの大切な弟の、ライル」
頬を、手で挟みこまれる。金色に変わる、ティエリアの瞳。
涙も流さない。助けの声も呼ばない。抵抗もしない。
全てを包み込む、天使。
「君が、大切だから」

ライルは、白けてティエリアを放り出した。
元々、同居人をレイプしようなんて考えていない。ライルも、いくらなんでもそこまで落ちぶれていない。
いくらティエリアがどんな女より美しいからといっても、ニールの恋人だ。兄のものだ。
そう、兄は何かにつけて弟であるライルより優れていた。そして、ほしいものは全て手に入れていた。
ティエリアの心は、永久にニールのものだ。

「抵抗くらい、しろよ」
「どうして?」
「どうしてって、あのなぁ。レイプされそうになってたんだぞ、俺に」
「したいなら、すればいい」
「はぁ・・・・これだから、お前さんは」
昔も、冗談で肉体関係を迫ったことがあった。そのときも、あっさりと抱きたいなら抱けばいいと答えたティエリア。体と心は別と考える、乾いた考えをティエリアは持っていた。

天使にしては、あまりにも無防備すぎる。
ライルは、着ていた上着をティエリアにかぶせた。
「しないのか?」
「しない」
ライルに求められるままに、ティエリアは何度か一緒に住むようになって、ライルと体の関係を持った。
でも、心は一向に癒されない。
愛されているわけでもない。
恋人でもない、でも友達でもない、そんな関係がもう二年も続いていた。




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