禁忌でもいいから「アニュー」







「これで、ございますね」
宝石店の店員が、アニューの手にエメラルドの指輪をはめる。
「ライル、いいの?これ、凄く高いわよ」
「構わないって。カードあるから」
ライルは、笑顔で答える。

使える金額は、かなりある。ライルの金ではなく、ティエリアの貯蓄であった。生活費として、カードを使っているために、そこから何か高いものを買っても、ティエリアは全く怒らない。
ライルは、家事の全てを請け負う変わりに、たまに賭け事なんかもしていた。
悪いとは思わない。ティエリアが許可したのだ。ニールの家に住む変わりに、金を負担すると。持ちつもたれつの関係であった。

「うれしいわ、ライル」
アニューが、ライルにキスをする。

そのまま、ライルは同じエメラルドのライルの指にあうサイズの指輪を買った。
「ライル・・・・・」
ライルがアニューを伴ってきた場所は、教会。

「はじめまして、迷える子羊よ。懺悔でも、ありますのかな?」
老神父が、二人をみてゆっくりと声をかける。
「結婚式を挙げる」
「はぁ?」
老神父は、目をむいた。
「あの、そういったことはもっとちゃんとした教会で、予約をしてそれからそれから・・・」
「いいんだ。ここで。今あげる」
「はぁ?」
老神父は焦りだしだ。
「ライル・・・・」
「アニュー、結婚しよう」
「ええ、結婚しましょう。うれしいわ。私、あなたの妻になれるのね」
「ああ。俺は、アニュー、お前の夫だ」

ライルとアニューは、互いのエメラルドの指輪をひきぬくと、交換しあう。
「俺ことライル・ディランディは、病める時も健やかなる時も、アニュー・リターナを妻として迎えることを、今、神の前で誓う」
「ほえほえ。勝手に進めてるし」
老神父は、すでに見物人になっていた。
「私ことアニュー・リターナは、病める時も健やかなる時も、ライル・ディランディを夫として迎えることを、今、神の前で誓います」
二人は、互いに指輪をはめあい、キスをする。

「神の祝福が、二人にあらんことを」
老神父が、深い祈りを捧げる。

「さぁ、あとは籍をいれて、それからたくさん子供を作ろう」
ライルは、エメラルド色の瞳から、涙を零していた。
「ええ、そうね。はじめは女の子がいいわ」
「いや、男の子がいい。野球チームができるくらい、たくさん子供が欲しい」
「あら、ライルってば欲張りね。それじゃあ、私がたくさんがんばらなくちゃいけないじゃない」
「俺も、ある意味がんばらないと。夜のことだけど」
「いやぁねぇ、ライルったら」
アニューが、綺麗な微笑を零す。

そう、あの時、最期に見せた綺麗な微笑を、アニューは刻んでいた。




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