血と聖水「血と聖水の名においてアーメン」







完全パロ。ヴァンパイアファンタジー。
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むせ返るような血の匂い。錆びた鉄の匂いが空気に四散している。
ティエリアは、無残にもヴァンパイアに血を吸われた死体を検分していた。
「まだ生暖かい」
死体は、まだ先ほどまで生きていたのだろう。
「血と聖水の名において・・・アーメン」
ティエリアに信じる神はない。
ティエリアは、もっていた銃で、死体の頭部を撃ち抜いた。
そうしないと、「ヴァンピール」という、ヴァンパイアの下等な、本能で血を求めるだけのヴァンパイアとして蘇ってしまう可能性があるからだ。ヴァンピールも一応はヴァンパイアだ。知能はゼロだが、並外れた身体能力を有する場合が多い。
本当なら、心臓に杭をさして聖水をかけ、墓地に埋葬しなければいけなかったが、そんなことをしている時間はない。
銃の銀の弾丸が、聖水のかわりになってくれる。頭部を銀の弾丸でうちぬけば、ヴァンピールは死ぬ。

「美しいお嬢さん・・・・このような荒れ果てた町へようこそ」
背後から声がした。
ティエリアは飛んだ。
地面から体が離れ、ほんの一瞬浮遊感を味わったかと思うと、家のレンガに叩きつけられていた。
「匂いがする・・・・銀の匂いが。ヴァンパイアハンターか」
ぎりっと、長く細い手が伸びて、ティエリアの首を絞めた。
「かはっ」
目の前にいたのは、美しい容姿をした20代後半のヴァンパイア。黒一色の服をまとい、血の色のマントをしていた。一般的なヴァンパイアの服装だ。
「それにしても美しいな・・・・」
ヴァンパイアの手が外される。ティエリアは呼吸を求めて息をつくと、いっきに駆け出した。
「血と聖水の名において・・・アーメン!」
長い真紅のコートの下から銀の短剣を取り出し、ヴァンパイアに向かって投げる。ヴァンパイアは余裕でそれをかわし、一度無数のこうもりの姿になる。それにむかって、銀の短剣を投げる。
「処女の匂いがする。106人目の生贄となってもらおうか」

1000人の処女の生き血を飲むと、ヴァンパイアは完全なる存在となり、銀の武器も、聖水もきかなくなるという。朝日を浴びて灰になることさえない。普通の日光のしたで、ヴァンパイアは活動できるが、朝日だけは浴びると必ず灰となった。その完全存在をヴァンパイアたちはロードヴァンパイアと呼んだ。

ティエリアが跳躍し、ヴァンパイアと距離をとる。
ヴァンパイアは、ティエリアの影に潜んでいた。
「な!」
ビリビリ。真紅のコートが凄まじい力で破られ、白い肌が露になる。
その首筋に、ヴァンパイアが牙をたてる。
「いやっ!」
抗うが、凄まじい力にはなすすべもない。ティエリアは、血を吸われ、そしてゆっくりと微笑んだ。
「血と聖水の名において・・・・いでよ、フェンリル!」
「うぐああああ、喉が、喉がやけるうう!」
もがくヴァンパイアに向かって、銀の短剣を投げて描いた陣で、使役魔を呼び出した。フェンリルと名づけた狼は、氷を司る精霊だ。凍てつく氷のブレスを受けて、ヴァンパイアは凍結した。
氷の彫像と化したヴァンパイアに、ティエリアは銀の弾丸を撃ち込んだ。
ガラガラと、氷の彫像が崩れ、そして灰になっていく。
「血と聖水の名において」
灰を小さなカプセルの中に入れ、その個体ヴァンパイアを倒した証とする。灰と引き換えに、ヴァンパイアハンターは報酬金をもらっていた。
「あ。ごめんなさい。戻ってください」
呼び出したフェンリルにペコリとティエリアはお辞儀した。でも、フェンリルは実体化したまま尻尾をふってティエリアにじゃれてくる。
「すまない。戻ってくれないだろうか」
「わん」
「狼なので、わんと咆えないでくれないだろうか」
「にゃあ」
「いや、もっと違うから・・・」

ティエリアは、銃をホルダーに直し、カプセルを直すと、ため息をついた。
いつもこんなかんじで、いつまでたっても一流のヴァンパイアハンターになれない。使役魔の数は他のヴァンパイアハンターと比べてもひけをとらないが、使役魔は服従絶対であるのに、ティエリアの使役魔は時々いうことを聞いてくれない。他のヴァンパイアハンターにバカにされることもしばしばだ。
もう十年もヴァンパイアハンターを続けているのに、未だに字(あざな)をもらえない。
兄弟のリジェネなど、七つ星をもつ一流のヴァンパイアハンターで、字も持っているのに。



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