「武器は・・・聖水と、銀の弾丸の入った銃、それに銀のナイフとビームサーベル。こんなものか?あとは十字架に・・・」 ヴァンパイアハンターであるティエリアの武器を勝手に身につけていくロックオン。 ロードヴァンパイアであるロックオンに、通常の聖水や銀の弾丸、銀の武器、十字架は効かない。 だが、使うものの方法次第ではロードヴァンパイアにもダメージを与えれる。たとえば、心臓に何度も銀の弾丸を撃ち込めば、ロードヴァンパイアでも死ぬ場合がある。 ビームサーベルは、ハンター協会から七つ星以上の最高クラスのハンターにのみ与えられる武器だ。ティエリアは、生まれた時は七つ星クラスのヴァンパイアハンターだった。だから、無条件で与えられたのだ。だが、実際に狩りを行い、報告で3つ星にまで落とされた。こんなことは初めてだった。 いきなり4つも星を落とされるヴァンパイアハンターなんて聞いたことがないと、今でも笑い種だ。ティエリアだって、イノベイターであるから無条件に七つ星にされただけであって、好き好んでそうなったわけでもない。 「あの、ロックオン。猫の缶詰なんて・・・フェンリルも連れて行くつもりですか?」 「勿論。俺、猫好きなんだ」 「いや、フェンリルは氷の精霊でしかも狼・・・」 「にゃあ。にゃあにゃああ」 開けられた猫の缶詰を、おいしそうにフェンリルは食べていた。 「猫じゃらしも忘れずに、と」 まるで、どこか旅行にいくかのようだ。これから大物のヴァンパイアを倒すとも思えない。 ティエリアは、使い魔の雀で刹那と連絡をとりあっていた。刹那の使い魔は、金色の鷹。雀と鷹・・・ここらへんからして、力量の違いが見えているが、ティエリアはくじけない。 リジェネも刹那も、イノベイターとしての「覚醒」をすでに終えている。ティエリアはまだ覚醒していない。覚醒していなくても刹那もリジェネも七つ星ハンターであったが、まぁ人生ほぼ不老不死で長いんだし、そのうちきっと強くなるよみたいなかんじで。 何より、パートナーはロードヴァンパイア。千年以上も前にロード直前のハイクラスとなった、つまりは千年間ずっとハンターを返り討ちにしてきたある意味最強である。 本名はニールというそうだ。ニールといえば、千年前に魔女狩りを引き起こす原因となり、南の王国3つを滅ぼしたとして有名なヴァンパイアだった。 それが、今ではこんな腑抜け。当時は空気さえも凍てつくといわれていたのに。 話では、999人目の処女として選んだのが95歳のおばあさんの魔女で、一緒に5年間孫として生きているうちに人間の情が移ってしまったのだという。魔女の魔法でもあったのかもしれない。 それから、1000人目をティエリアで選んだのがさらなる間違いだった。ティエリアは無性であり、処女といわれても性別がない。女性の処女を吸血しなければならないしきたりのある中、それまでの吸血が全て無意味となった。すでにロードであったが。でも、すっごい人間臭くなった。 コンコン。窓が鳴らされて、ティエリアは窓を開ける。 刹那の使い魔である、白の鷹が入ってきた。刹那は複数の鷹の使い魔を持っている。 鷹は、窓に文字となって消えた。それを読む。 (敵、ロードヴァンパイアと確認。現在交戦中) 「刹那が、確認したそうです。ロードヴァンパイアだそうです。急がなくては。刹那がすでに交戦中だそうです」 「フェンリル」 「にゃあ?」 ロックオンが、牙で自分の親指を噛み切る。そこから滴る甘美な血を、フェンリルに舐めさせる。 ロードヴァンパイアの血は、分け与えた者に力を与える。 ロックオンはティエリアを手で抱えた。 「な、何をするのですか!自分で歩けます!」 「いけ、フェンリル」 「にゃああ・・・・・オオオーン」 窓の外に、フェンリルが飛び出す。 すると、真っ白な狼は、狼らしい遠吠えをあげた後、3メートルはあろうかという巨大な狼になった。その背中に、ロックオンがひらりと飛び乗る。 ティエリアをおろす。 フェンリルの背にまたがり、二人は刹那の元へと向かった。 フェンリルは、ロックオンの血を得て、通常よりも巨大に実体化し、空をかけた。 NEXT |