エメラルドの彼方「そらへ・・・・」







「一緒に、眠りましょう?」
ティエリアに手をひかれて、ロックオンは生家の寝台でティエリアの隣に横になる。
「そう、いつもこんな風に、一緒に寝ていましたね」
「ああ。ティエリアは、俺と一緒に寝るのが大好きだったもんな。ジャボテンダーさんと」
「ジャボテンダーさんは、健在ですよ?生活区域に移しました」「
「そうか」
「今は、あなたと一緒に眠りたい」
「眠り姫。王子様が、見守っているから。お休み」
ロックオンに優しく抱擁されて、ティエリアは泣き疲れてすぐに眠ってしまった。

「なぁ、ティエリア。俺は、後悔していない。お前を支えれるなら」
ティエリアの紫紺の髪をすく。
何度も何度も優しく撫でる。
額にキスを落とす。
「あなたも、眠って」
「一緒に眠ろう」
ロックオンも、深い眠りについた。

このまま、二人で眠りについたまま目覚めなければいいのに。

ヒラヒラと、エメラルド色の蝶がティエリアの髪にとまる。
エメラルドの色は、ロックオンの瞳の色だ。
その蝶は、光の雫となって消えた。

ロックオンは、涙を零して眠ってしまったティエリアを抱き寄せた。
「・・・・あの選択をしたときから、決まっていたんだ、俺の運命は」

光の河岸で、その人は涙を零す。
エメラルドの隻眼から、銀の波を。

すうっと、空気に溶けていくように、ロックオンの足が透けた。
ティエリアは気づいている。
だから、急に泣きだしたり情緒不安定になるのだ。隣にロックオンがちゃんといるのに。

「ごめん、な。愛しているよ。愛しているよ。こんなにも愛しているよ」
涙はポタポタと、ティエリアの白皙の美貌の頬に落ちる。
「後悔、しまくってる。お前と離れたくない。一緒にいたい。でも、俺にも譲れないものがあるんだ。許してくれとはいわない。憎んでくれ」
ゆっくりと、石榴の瞳があき、金色にかわった。
「あなたを、憎めるはずなんてないのに」
「ティエリア・・・・」
「ロックオン・・・・・あなたは、あなたは・・・・」
「ティエリア、愛している」
「ロックオン、愛しています。消えないで」
ティエリアの想いの力だろうか。透けていたロックオンの足が、元に戻った。

「みんなが待ってる。宇宙に、戻ろう。そらへ」
「はい・・・・」

次の日、宇宙ステーションいきのシャトルに二人は乗り込んだ。


光の河岸で、その人は遠くを見つめていた。
手にはめた、恋人とお揃いのペアリングを手から抜く。
そして、空に向かって放り投げた。
それは、一羽のエメラルド色の小鳥となって光の河岸から飛んでいった。
隻眼の青年は、微笑む。


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