エメラルドの彼方「あるべき事象へ」







ティエリアは、支給された新しい制服に着替える。
「っと、襟が曲がってる」
ロックオンも、同じ制服で、イメージカラーは緑だ。ティエリアは紫。

「トレミー、全速前進!」

茶色の手袋に包まれたティエリアの手が、指揮をとるたびに機敏に動く。
リーダーには、ティエリアが選ばれた。ロックオンは辞退した。

トレミーには、新しい4機のガンダムが搭載されている。
ティエリアのセラヴィム、ロックオンのケルヴィム、アレルヤのアリオス、刹那のダブルオー。
アレルヤと刹那は以前と行方不明であったが、刹那のエクシアらしいGN粒子の痕跡が発見された。

刹那は一人で戦っているのだ。
そう、皆戦っているのだ。過去の痛みから。
そして、ついに刹那が発見された。
ティエリアは、刹那の元に行く前に、ロックオンを呼んだ。
「ティエリア、こっちへ・・・・」
「はい・・・・」
刹那が戻ってきたというのに、ティエリアは暗い顔をしていた。

ティエリアの部屋に割り当てられた部屋に、二人で入る。
「刹那が、お前を守ってくれる。がんばれるか?」
「・・・・・・・・・」
「ティエリア・・・」
「私の世界は、あなたがいるから成り立っていたのに!もう・・・覚悟は決めていたのに。どうしてでしょうね、涙が止まりません・・・・」
ヒラヒラと、室内をエメラルド色の蝶が舞う。
「愛している」
バサバサバサ。光の河岸から、隻眼の青年が投げたペアリングで生まれたエメラルド色の小鳥が、ティエリアの肩に止まり、そのまま手袋をした手にとまると、ペアリングに戻ってしまった。
「形見、に。ちゃんと、はめてくから、これは」
手袋を外し、ガーネットをあしらったティエリアとお揃いのペアリングを見せる。

「消えないで・・・・」
ティエリアは、涙を零して、ロックオンに抱きついた。
「ずっと、支えれた。俺の願いだったんだ。本当の俺は、エメラルドの彼方にいる」
「そこにいけば、あなたにまた会えますか?」
「だめだ。お前は連れて行けない」
「愛しています・・・・この四年間、支えてくれてありがとうございました」
ポロポロポロ。
いくつもの涙が、ティエリアの瞳から溢れた。
「あ。ああああああ・・・・・いやああああああ」
耐え切れずに、ティエリアは泣き叫んだ。
ロックオンは、そんなティエリアをただ抱きしめる。
「いかないで・・・・愛しているんです・・・・消えないで・・・・一緒に最後まで歩むと約束したではありませんか・・・・」
「四年前に、俺はもう死んでいるんだよ、ティエリア・・・・。あのときに」
「知っています・・・気づいていました・・・・でも、四年も傍にいられるのなら、まだ傍に・・・」
「もう、限界なんだ。ごめんな」
ロックオンは、涙を零してティエリアに深く口付ける。

「ずっと、見守ってるから」
「いや・・・消えないで・・・・」
ロックオンは、エメラルド色の蝶となって、散っていく。
「ロックオン!!」
「愛してる。ずっと、ずっと・・・・」
ロックオンの声が遠くなっていく。
「いやああああああああ」
ティエリアは絶叫して、床に両膝をつけた。

「泣かないで・・・・愛してるよ・・・・」
ヒラヒラと、何羽ものエメラルド色の蝶が、ティエリアの周りを舞う。
ティエリアは、嗚咽を漏らしたあと、立ち上がった。

「四年間、支えてくださってありがとうございました。ずっと愛しています」
手袋で、乱暴に涙を拭う。
歩いて、行かなくては。もう何年も昔に、覚悟はできていただろう。
何度も泣いた。その時が今、訪れたのだ。
試練は誰にでも訪れる。

歩いて、いこう。ロックオンの分まで。彼の意志を継いで。

「あれ?ティエリア、どうしたの?泣いていたの?やっぱり、ロックオンのこと、まだ・・・・」
フェルトが、涙の跡があるティエリアに声をかける。
そう。全ては、あるべき事象へと戻ったのだ。
ロックオン・ストラトス。彼は、四年前に死んでいる。それが、現実。
彼が歪めていた事象が、元に戻ったのだ。
「四年間、支えてくれたんだ、彼は」
「え?」



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