「だって、あなたは物質世界では」 「奇跡って信じる?」 「あなたが、四年間僕を支えてくれた時のような?」 「そう。そんな奇跡」 「信じます。あなたの奇跡なら、たとえ嘘だっていい」 「ティエリア?」 「僕を、殺して。あなたが消えないうちに。そして連れて行って」 「ティエリア」 ロックオンの手を、細く白い首にかけさせる。 けれど、絞める気配は微塵もない。 ただ、強く胸にかき抱かれる。 「精神世界で、愛してるって何度も囁いたな。物質世界でも、何度でも言うよ。愛してる。もう、置いていったりしないから。傍に、いるから。異種が、「新しい命」をくれたんだ。そう、力みたいなものかな。奇跡をおこす力。「新しい命」は普通は転生したときに使うものだけど、俺は賭けに出てみた。精神世界で使ってみたんだ。なぁ、まだ俺のこと愛してる?」 「何をばかなことを。いつだって、あなたを愛しているのに」 「愛してるよ」 「僕も愛しています」 次の瞬間。 ティエリアは泣き崩れた。 「あああああああああ、うわあああああああああああ」 何度も何度も。 ロックオンの胸に縋りついて涙を零す。 「ただいま」 「おかえりなさい。消えないで、消えないで、消えないで」 「大丈夫、もう消えないから。離さないから。泣くな」 何度も抱きしめられ、口付けられる。 ティエリアは、そのまま眠ってしまった。全てが、夢だと。 目覚めると、隣にロックオンが眠っていた。 「嘘だ」 ティエリアは、ロックオンの頬をはたいた。 「いてー!何すんだ」 「それはこっちの台詞です!どうして!?」 「だから、昨日いっただろ。異種が、「新しい命」をくれたって」 「そんな、御伽噺みたいなこと!」 「じゃあ、俺が幻に見える?」 ティエリアは、思い切り自分の頬をはたいた。 「痛い・・・・」 「そんだけ力こめてぶてば痛いだろうさ」 「ロックオン」 ティエリアは、ジャボテンダーを取り出すと、ぶんと勢いをつけてロックオンを殴った。 「あいて、いて、簡便!」 ジャボテンダーで殴りながら、ティエリアは涙を零した。 NEXT |