私立ガンダム学園へようこそ







「で、あるからにして。我々はがんばります。ガンダムマイスターなるべく学ぶ者、あるいは青少年、あるいはただ単に興味だけで生徒になった者や、とりあえず生徒であればがんばってください。でも留年大歓迎です。お金またもらえますから。あと15分ほどこうして長々としゃべらないといけないんですけど、疲れました。いやまじごめん。おじいさんも年なの。んじゃね」
朝の全校生徒集会で、校長のイオリア・シュヘンベルグはもうどうでもよさそうな挨拶のあと、台本を見ながらしゃべって去っていった。
ここは、私立ガンダム学園。ガンダムマイスターとなるべく者たちが集う高校だ。というのは表向きで、ただの高校だ。確かに、職業としてガンダムマイスターというものはあるが、実際になれるのはごく少数だけで、それにガンダムマイスターはアイドルのような存在であって、実際にガンダムに乗ってもこの平和な世の中戦争なんてありゃしない。ようは、ただの高校。しかも、思いっきり奇人変人が集まる、もうすでにある意味終わってる高校であった。

「はい、解散〜」
教師のミス・スメラギが酒を片手に解散の言葉をかけた。
教師からしてこれなので、生徒も生徒だ。
すでに帰宅しようとしているものまでいる。まぁ、そういう者は単位をとれなくて留年になるので、教師も止めはしない。

「おはよう、刹那」
アレルヤが、同じクラスの刹那に挨拶する。
アレルヤは16歳(無理やり年齢を変えられた)の、大人しいごく普通の生徒だ。
「おはようさん」
同じく、挨拶をしてくるニール。
「おはよー」
ニールの双子の弟のライル。
二人ともかってに年齢をかえられて、17歳となっている。見た目も若々しい。そんなこというと、原作の29歳なライルが「三十路前で悪かったな」とかいいそうだけど。
「俺はガンダムだ」
刹那の朝の挨拶は、それから始まる。それを聞いて、アレルヤもライルもニールも、一日が始まったなぁと感じるのであった。

「はい、皆さん静かに。今日は転校生を紹介します」
「まじで。こんな高校に転校してくるなんて終わってる」
「かわいそうに」
生徒の間からざわめきが漏れる。
ガラリと戸をあけて入ってきた二人に、2年OO組の生徒は絶句した。
場違いな、その雰囲気。
全身からいい家柄の子供ですというオーラが出ている。双子だった。
一人は少年らしく、ブレザーの男子制服を着ているが、上からシルバーフォックスストールをしており、思い切り校則違反をしていた。
双子は男女の組み合わせあっだった。少年のほうは、手首にはプラチナのブレスレット、指にはいくつかの指輪に、首には純金のペンダント。普通の高校生がジャラジャラするようなアクセサリーのつけ方をしているが、どれもとても高価で高そうに見えた。少年は、はっきりいって少女に見えた。中性的な顔立ちをしているが、シンメトリーを描く二人はどちらかというと美少女に見える。
もう一人はブレザーの上は女子生徒服なのに、半ズボンをはいていた。半ズボンについでに白いニーソ。絶対領域から見える肌がとても白い。
私立ガンダム学園のスカートは短い。長くしても勝手に短くしてしまう女生徒が多いので、もう思いっきり膝うえにしている。


「名前を紹介いたします。ええと・・・」
「リジェネ・レジェッタ」
少年が綺麗な声でそういって、進み出る。
「それから、こっちは妹のティエリア・アーデ。クラスの男たちにいっておく。ティエリアを口説かないことだ。ティエリアは僕のものなんだから」
「リジェネ。僕は君のものになった覚えはない。とりあえず、よろしく。それから、苗字が違うのは、父と母が離婚しているからだ」
ティエリアの言葉に、少し同情が集まる。それに、ティエリアが嫌そうに眉を顰めた。
「勘違いしてもらわないでいただきたい。母と父は今でもあつあつのラブラブカップルだ。離婚しているけど、同じ屋敷に住んでいる。かわっているだけだ」
それ、思いっきりかわってませんか?普通、ラブラブなら離婚しないだろうに。誰もが思ったが、二人の美貌に圧倒されていた。

「ちょ・・・・まじ・・・・”アークエンジェロス”の双子じゃんか」
一人の男子生徒が、驚いた。
”アークエンジェロス”とはユニット名だ。メインボーカルが二人いるかわったグループでも有名だ。6人の、中性的で美しい少年を集めたアイドルグループで、ビジュアル系バンドとして活動している。メインボーカルは双子で、最初片割れは少年、ということになっていたのだが、結局は無性に近い少女であると発表した。
双子は、受精卵の段階で人工生命体として誕生した。母親の子宮ではなく、カプセルから生れてきた子供を人工生命体という。成功率がほとんどなく、また人道的概念から禁止している国がほとんどだ。
カプセルから生まれた双子であると、最近になって発表した。現在の父と母とは血が繋がっておらず、作られた後に、養子としてひきとられたこと、ティエリアのほうは無性に近い少女(性別を決定付ける器官をもたずに生れててきて、親が戸籍を女性にした)という世界でも一人しか存在しない極めてまれな個体であること・・・。さまざまなネタから、歌がうれることにまた拍車をかけ、世界中で5枚目のアルバムは1200万枚を突破している。とても綺麗な声で、双子は歌う。

ざめめきが、教室中に広がるが、すぐにしんとなった。だって、ここは私立ガンダム学園。アンドロイドの生徒だっている。奇人変人が集まる高校だ。

「よろしく」
「よろしく」
双子は頭もさげずにそう言うと、教師から指定された席につく。
ティエリアはニールの隣だった。すぐに、ティエリアの雰囲気が柔らかくなる。
「ニール。今日は、一緒に登校できなくてすみません」
ニールとティエリアは、恋人同士だった。前の学校で、ニールとティエリアは同じ学級の生徒だった。ニールが告白し、ティエリアはそれを受け入れた。その学校は芸能活動を禁止しており、またニールがガンダムマイスターを本格的に目指すことに決めたので、ニールが先に私立ガンダム学園に転校したのだ。
ティエリアのほうは同じ学校に転校しようとして、父と母から最初反対されていた。リジェネと同じ伝統ある進学高校に転校するように言われたが、結局リジェネはティエリアについてきた。リジェネは、誰よりもティエリアを愛し、大好きだった。
父と母を説得させてくれたのもリジェネだ。父と母は貴族の家柄で、母に到っては某王国の王女であった。そんな二人に育てられたティエリアとリジェネは、自分たちの存在と父と母以外、目に入れない変わった人間であった。それも、芸能活動の開始から少しかわってきた。数億を稼ぎ出す双子に、父と母は芸能活動に関しては好きにさせていた。
あるとき、身代金目的の誘拐で攫われかけたティエリアを助けたニールに、ティエリアは恋をしてしまった。ニールもティエリアに恋をしてしまった。ニールの告白を受け、恋人同士になった二人。

「ちょっと、ニール!ティエリアは渡さないよ!」
いつもの、リジェネの横槍がはじまる。
ニールは声もなく笑いながら、双子の転校を心から歓迎した。


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