私立ガンダム学園4







「はい、体育教師のラッセ・アイオンです。今日はテニスだぞー」
「は〜い」
ラッセ先生も、比較的まともな先生なのでみんな安心だ。
「それじゃ、女子と男子に別れて」
「先生」
「どうした?ええと」
「転校生のティエリア・アーデです」
「ティエリア君」
ラッセは白い歯をキランと輝かせた。
「僕は無性です。男性でも女性でもありません。前の学校は男子生徒として在籍していましたが、戸籍は母が女性にしています。僕は、男子と女子どちらでテニスをすればよいでしょう?ちなみに女子更衣室で着替えてきましたけど、見ての通り体操服は男性用のものです」
ラッセ・アイオンはいまだかつて質問されたことのない難題をぶつけられ、固まった。

「えーと?無性?」
「はい。性別がないんです」
「そうか」
ラッセは首をひねった。
一緒に、ティエリアもひねる。
「先生?」
「うーん。世間様では君は少女的無性と言われているようだし、女子テニスでいいんじゃいのかなー?」
「でも、僕は男子と一緒にテニスがしたいです」
「そうか。じゃあ男子でいいんじゃないのかなー」
「そうしなよティエリア」
一緒にテニスができると、嬉しそうに双子の兄のリジェネが手を振る。
ラッセは太陽を仰いだ。
「うーん今日もお日様が眩しい」
現実逃避だ。
「それじゃあ、別れて別れて」

私立ガンダム学園は無駄に金をかけており、専用のテニスコートも存在する。
「刹那、一緒に対戦しようぜ」
「了解した。駆逐する」
「駆逐すんのかよ!まだ何もしてねぇだろうがっ」
ライルが、テニスボールとラケットを片手にため息を出す。
そのまま、試合がはじまった。

ガサガサ。植え込みのところには、グラハム先生が息も荒く8ミリビデオを片手に撮影をしていた。
「その勇姿、見逃さんぞ少年!」
ヒュッ。刹那が投げたテニスボールは、コートにいかずにラケットごと、グラハム先生を直撃した。
「変態は駆逐する」
「うわ、グラハム先生だ!エンガチョ!」
ライルが、テニスボールをたくさんぶつける。
グラハム先生は、頭にたんこぶをいっぱいつくってがさごそと植え込みの中に戻っていった。
「愛は痛いなぁ」

「7−0、ティエリアの勝ち!」
1点もいれさせなかったティエリアの勝ちだ。
「やっぱ強いなぁ」
対戦相手のアレルヤが頭をかく。それを見ていたニールが、ポンと手を叩く。
「テニスって、0のことラブっていうんだな。ティエリア、I love youっていってみ?」
「あいらぶ〜」
紅くなって答えようとするティエリアより先に、リジェネがニヤリと唇を吊り上げた。
「I kill you」
「いや、こんなことくらいで怒んなよ!」
「きるゆうううう」
テニスボールを手にとっては、ポカスカとニールに投げつけるリジェネ。
「駆逐!」
「6−2、刹那の勝ち」
ライルはまた負けた。
「兄さん。刹那強いんだ。戦ってみれば?・・・・それ新しいプレイ?」
「いや、違うから!」
リジェネが投げつけるボールを、代わりにティエリアが打っていくのを見て、ライルは笑った。
「へぇ、刹那強いの。僕と対戦する?」
「ガンダム」
「何言ってるのかよく分からないけど、対戦する、ということにしておこう」
「俺たちはガンダムだ!」
「僕は普通のイノベイターだ」

お互いボールの拾いあいになり、ざわめきが広がる。
「おい、あの刹那相手にすげぇ」
リジェネは、プロも使う技も入れている。相手の刹那もだ。
ラリーが何分も続く。
くいくいと、ティエリアがニールの体操服の袖をひっぱった。
「あの、あの、対戦しませんか?」
「あー。やっぱかわいい」
ニールがティエリアを抱きしめる。ニールの腕の中で、ティエリアは紅くなっている。それを見て、他の女子も男子も和んでいた。だって、リジェネと違ってティエリアはただ美貌が華やかなだけでなく、とても可愛らしいのだ。ニールと付き合っていると言い出したのは、ニールの方からだった。すでに、男子女子からラブレターをいっぱいもらっておろおろしているティエリアに、余計な虫をつかせないためであった。


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