体育の授業も終わり、お昼休みになった。昼食タイムだ。 ライルとニールはパンだったが、ティエリアとリジェネはお弁当だった。それぞれ、自然と机が近いためにくっつけることもせずに食べだす。 アレルヤは、彼女のマリーと食べるために食堂に出かけてしまった。 「いつ見ても・・・お前らの弁当、豪華だな」 ライルがティエリアとリジェネのお弁当を見てため息をもらす。 それはそうだろう、リジェネとティエリアは大富豪の家庭の子供だ。選任のコック長が調理してくれる。 一つぽつんとしている刹那に、いつものようにニールが声をかける。 「刹那、一緒にたべようぜ」 「了解した」 刹那は、ただの食パン2つと牛乳を取り出した。 「刹那、それだけ?」 ティエリアが聞くと、刹那は頷いた。 「ちょっと待ってね。あーもしもし、コック長?今すぐに、サンドイッチ作って」 「かしこまりました、ティエリア様」 念のためにと、コック長は学校にスタンバイしていた。キッチンつきの車の中で、最高級の食材を使ってサンドイッチを作ると、メイドがそれを持って学校の中に入ってきた。 ガラガラ。戸をあけてメイドはいろんなものがのったカートを持ってきた。 「ありがとう」 「ティエリア様、お飲み物はどういたしましょう?リジェネ様は?」 「僕はコック長のフルーツジュースで」 「じゃあ、僕もそれで。あと、もう一人分いける?」 「かしこまりました」 いきなり入ってきたメイドに、ニール、ライル、刹那は固まっている。 セレブは生活からして違うのだ。 できあがったサンドイッチを皿に盛ったのを刹那の前におき、運んできたカートからグラスを三人前だすと、ティエリア、リジェネ、そして指示された刹那の机において注ぐ。 そこで、ティエリアは思った。ライルとニールにもどうだろうかと。 「ライルとニールも飲む?おいしいよ。コック長は一流レストランの出身なんだ」 こくこくと、圧倒されて二人は頷いた。 あと二人分、コップある? 「も、申し訳ございません。コップもグラスもあと一つしか・・・」 「あ、じゃあストローちょうだい。僕、ニールと一緒に飲むから」 「畏まりました」 ライルの前にグラスがおかれ、それにフルーツジュースが注がれる。 ニールとティエリアのには、グラスのところにカットしたパイナップルが2個つけられて、ハート型のストローが入れられた。 「流石、アーデ家とリジェネ家・・・・」 ライルの言葉通り、二つの家は大富豪で、両親はなぜか離婚しているが一緒に住んでいるし、それはアーデ家とリジェネ家が不幸な事故で親族を失い、互いに親と子供しか親族がいないことに起因していた。それぞれ、家名を失うわけにはいかないので、あえて離婚し、子供にそれぞれ家名を継がせ、結婚した相手にも継がせるということで両親の意見が一致したのだ。夫婦別姓という方法もあったが、二人の両親はアホなので思いつかなかった。何百年も続く貴族と王族の歴史ともつアーデ家とリジェネ家からすれば、苦肉の策である。養子をとるという方法はとらなかった。まだ、子供たちがいるのだ。 リジェネは、何かいいたそうであった。むすーっとした顔をしている。 でも、こんなこと日常茶飯事であるのだからもう慣れた。夕飯の席にニールとライルがいるのだって慣れた。 「これは・・・食べてもいいのか?」 呆然としている刹那。 刹那は一人暮らしだ。バイトで生計をたてている。両親は幼い頃になくした。 「どうぞ」 ティエリアはにっこりと笑う。 刹那は、サンドイッチを一口食べて、涙を流した。 多分、普通では一生かけても食べれないような高級食材ばかり使っている。 刹那の家庭の事情を知ったティエリアは、ニールとライルと同じように、刹那にも資金的な援助をすることを決めた。ニールとライルも幼い頃に家族をテロで失っており、施設暮らしだった。 こうして、刹那はバイト人生から解放された。刹那の性格からすると断ると思われたが、ニールとライルと一緒で、将来月賦制で生活援助金を返すということで一致したのだ。 刹那だって、勉強をする時間をもたなければ進学できない。 ちなみに、なぜかニールとライルと刹那はティエリアとリジェネの両親にとても気に入られ、しまいには屋敷の離れに住むこととなってしまった。 リジェネは文句を言っていたが、ティエリアもそして両親も幸せそうだったので止めなかった。 「子供が三人も増えたよママ」 「でも養子にしちゃだめよ?いずれ、この中の誰かがティエリアさんのお婿さんになるのだから」 「分かっているよママ。パパは嬉しいよ。子供は多い方がいい」 ティエリアとリジェネの両親は、一言でいうととてつもないアホだった。 NEXT |