「ニールを保健室に連れていきます」 ティエリアが、相当なダメージを負ったニールの肩を支えて教室を出て行った。 「仕方ないね・・・」 リジェネは黙認するようだった。ことあるごとに二人の邪魔をするリジェネであったが、ティエリアを愛するが故のことで、ちゃんと二人の時間は与えてある。 皆は、自習ということでそれぞれ適当に談話をはじめる。 「大丈夫ですか、ニール?」 「ああ、すまねぇ」 保健室の先生はいなくて、ニールはベッドに寝かされていた。 ティエリアが、手持ちの絹のハンカチを水でぬらして、グラハム先生が吸い付いていたところを何度もふきとって、それから額にハンカチをのせる。 ニールの手が伸びて、ティエリアをベッドの上にのせる。 「あの・・・・」 「どうせ自習なんだし、一緒に寝とけ」 ニールに抱きすくめられて、ティエリアは困った顔をしたあと、ニールに口付けて、一緒にベッドに入った。 カーテンでしきられたベッド。隣のベッドには誰もいない。 大好きなニールの腕の中で、いつの間にかティエリアはまどろんでしまった。 2時間目、3時間目が終わった後、流石に遅いとリジェネが苛苛しだした。 「僕、保健室にいってくる」 「ああ、兄さん見てきてくれ」 ライルも、心配そうだった。 「失礼します・・・・あれ、誰もいない?」 リジェネは、カーテンでしきられたベッドのカーテンを開ける。 そこにいたのは、幸せそうに眠りにつくニールとティエリアの姿だった。 「まいったね・・・怒ろうにも、怒れないよ」 ティエリアは、屋敷でも時々ニールと一緒に眠ることがある。いつもリジェネと一緒のベッドで寝ているせいで、一人で眠るのが寂しいのだ。 「まぁ、いいか」 リジェネは、隣のベッドにもぐりこむと授業をエスケープした。 そのままお昼になっても戻ってこない三人を心配して、ライルとアレルヤが保健室を訪れると、そこで見たものは安らかに眠るティエリアとニール、そしてリジェネの姿だった。 「おい、兄さん、いい加減起きろ。ティエリアもリジェネも。もう昼だぞ?」 揺り起こされて、一番にニールが目を覚ました。リジェネも目を覚ます。ティエリアだけが、眠ったままだった。 「ティエリア、朝だよ」 リジェネが起こそうとするが、ティエリアはむにゃむにゃいっている。 「ティエリア、起きないとキスするぞ」 とかニールは言いながら、すでにティエリアに触れるだけのキスをしていた。 「ニール。みんな、おはよう」 伸びをするティエリアの背後で、ドス黒い何かの気配があった。 「ニールううううううううううううう!?」 リジェネが、覚醒した。金色に目を光らせて。ハリセンを取り出して、何度もニールの頭を殴る。 スパーン、スパーン。 「あいててて、簡便!」 「リジェネ」 ティエリアが、リジェネの頬にキスをする。 それだけで、リジェネは止まった。どす黒いものも消えて、いつものティエリア溺愛のリジェネに戻る。 「ティエリア、今日はニールと寝てもいい約束だったけど、今日は僕と寝るんだよ」 「えー、なんで?」 「保健室で一緒に寝たじゃないか。だから、今日は僕と寝るの」 一度言い出したら聞かない、子供の部分を持つリジェネに、ティエリアは仕方なく頷いた。 ニールもリジェネもティエリアと一緒のベッドで眠るだけで、他にはせいぜいキスとか抱擁があるくらいだ。ニールとティエリアは付き合っていたが、まだお互い未成年でもあるのだし、清い交際であった。 その点、弟のライルはアニューと肉体関係まである大人の付き合いをしている。 「とりあえず、もう昼だ。昼飯にしよう」 最もな刹那の言葉に皆頷く。 そして、なぜか保健室で昼食となった。 NEXT |