私立ガンダム学園U7







そのまま体操服に着替えたティエリアは、ゼッケンをつけてコートに入る。
ニールとライルと一緒のチームだ。あとの二人は一年の実力派だ。私立ガンダム学園は、サッカー、テニス、バスケと水泳のクラブが全国レベルとして有名だった。ライルとニールは、昔は施設暮らしだったが、中学の時のバスケ部が全国制覇を果たし、スポーツ特待生として学園に入学し、入学金はもちろんその他の費用も免除されている。そうでもなければ、私立の高校になど、親のいないライルとニールが入るわけがなかった。

「試合開始!」
審判の笛が吹かれた直後から、マンツーマンとしてティエリアに張り付いた先輩が、こっそりとティエリアの体を触っていた。ティエリアは不快に思ったが、声には出せない。
それをいいことに、服をひっぱられ、胸を触られた。しかも、何度も。明らかに、意図して体を触ってきている。
流石のニールも気づいたようで、殺気だってその先輩を見ていたかと思うと、審判を呼んだ。
「ティエリア、我慢しなくていい。ありのまま話せ」
「ニール。この先輩が、さっきから胸とか尻とか腰とかいろいろ触ってきて・・・・セクハラ行為を僕に」
「だそうです、審判。男子バスケ部に入っていますが、彼女はあの王女を母親にもつ伝統あるアーデ家のご令嬢です。無性ということで男子バスケ部に入っていますが、セクハラ行為はどうかと」
「君、そんなことをしたのかね?」
審判が、ティエリアにセクハラしていた先輩を詰め寄る。
「だ、誰がそんな貧弱な体なんか触るかよ!」
「貧弱で悪かったな!」
ティエリアは先輩を投げ飛ばしそうな勢いだ。部長が声をだし、顧問も監督の先生もその先輩を試合から外した。
アーデ家に睨まれれば、最悪バスケ部の取り潰しさえありうるのだ。
それに、ニールは実力がある。次期部長候補だ。ニールとライルに睨まれれば、スタメンでもない限り、不正行為やケンカをしたりして、バスケ部にマイナスにしかならない者はバスケ部にはいづらくなる。1年と2年を従えているニールとライルは、バスケ部の皆に慕われていた。そのニールが嘘をいうはずはない。他の部員も皆信じているようだった。

「試合、再開!」
笛がなる。
ニールとライルは目で合図を送り、前線に攻める。
一年の二人を入れて、そのまま試合は進む。
「ティエリア!」
ライルが、ティエリアにボールを渡す。
ティエリアは、その場所でゴールに向かってシュートを狙う。
「ばっかじゃね、あんな場所から入るわけねぇよ」
そこは、3Pシュートのゾーンよりさらに離れた敵のゴールが近い地点。
ティエリアが飛ぶ。綺麗に体は後ろ向き斜めになっており、基礎のバスケテクニックが身についている。
スパ!
「ゴール!」
審判の声が響く。
華麗に、遠く離れた場所にティエリアのシュートは決まった。3Pゾーンより外なので、3点が入る。
流石に、ライルとニールだけでなく、バスケ部員全員が驚いていた。あの細い華奢な腕で、まずそこまでボールがいくとさえ思わないだろう、普通は。
3年チームが最初はリードしていたが、ニールがダンクを決めると、見ていた女子バスケ部員からも歓声があがった。ライルが負けずと、同じようにダンクシュートを決める。
二人とも高校二年だが、身長は185を超えている。
ティエリアはも背は高い。
ティエリアにボールを渡す一年。ティエリアはダンクこそできないが、綺麗に何度も正確に3Pシュートを決めた。一度たりとも外さない。

「試合、そこまで!」
結果は、3年76点1、2年合同軍124点。
力の差は歴然だ。ほとんどがティエリアの3Pシュートによるものだ。

「凄いな、お前」
ライルが、ティエリアの頭をぐしゃぐしゃにして、肩を組む。
「兄さん、凄いぞティエリア。今まで3Pシューターが不足してたんだ。いっきにスタメンじゃないか、これ?」
「そうだな。ティエリア、がんばったな」
ニールに抱きしめられて、それから一年の二人も「凄いです先輩!」と嬌声をあげて抱きついてきた。
ニールは、相手が邪な感情を持っていなければ、ティエリアに抱きついたりしても別に怒ったりしない。

「ありがとう」
ティエリアは、笑顔で皆と握手する。
監督と顧問の先生は、早速話し合いをしている。
もうすぐ、全国試合がはじまる。二人とも嬉しそうだ。全国試合を前に、えもいわれる逸材が入ってきたのだ。ティエリアのスタメン入りは確実だろう。



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