「ぎゃあああああああああああああああ」 ティエリアの口から、普段ではありえないような悲鳴が漏れる。 「うわあああああああああ」 その音量と形相に驚いて、一緒にいたロックオンまで悲鳴をあげた。 ティエリアと一緒に過ごすのは、もう一ヶ月ぶりくらいだろうか。地上の昔の友人と、最近ずっと飲み歩いて、女を抱くことはしないが、香水の臭いとアルコールの臭いをつけて帰還したかと思うと、ティエリアと一緒に一日を過ごしたかと思うと、何も言わずにまた地上に降りて、昔の友人と地上で過ごしていた。ティエリアは未成年だし、ミス・スメラギからトレミー待機指示が出ているため、一緒には連れて行けない。 ティエリアと一緒に過ごすのは、本当に久しぶりなのに、その事件は起こった。 「殺人事件だ!」 ティエリアの部屋。いつもと変わりないように見えて、天井から変なものがぶら下がっていた。 ブラーン。 ジャンボテンダーさんの子供、ジャボリー君が首をつっていたのだ。ジャボテンダーさんは、この前出産し、ジャボリー君なる男の子を産んだ。ジャボリー君はミニジャボテンダーで、ロックオンが作ったものだ。 「おろさないと」 「殺人事件だ!謎は全てここにある!」 ティエリアは、また変な本でも読んだのか、虫眼鏡を取り出した。 いや、そんなことしてる暇があったら、ジャボリー君おろせば?とロックオンは思ったがつっこまなかった。 「とりあえず、おろすぞ」 「はい」 ロックオンの手によって、ジャボリー君はおろされた。 現場は、ティエリアの部屋。 ジャボテンダーに巻かれた布は、何かの布を裂いたものだった。 「ジャボリー君・・・・ご冥福をお祈りします。そして復活の呪文!」 ティエリアは南無阿弥陀仏と唱えたあと、必殺の呪文を唱えた。 「ザオリク!」 それはドラクエシリーズで、死んだ仲間を100%蘇らせる呪文だ。 「じゃあ、俺はフェニックスの尾でも使うか」 ロックオンは適当に調子を合わせる。 「ザオリクが失敗した」 100%復活する呪文じゃなかったのかよ。失敗するものなのか。 「流石に素人の僕が唱えても無駄のようだった。何せ、僕はザオリクの呪文を習得していないからな」 だったら最初から唱えるなよ。ロックオンは思ったがつっこまない。 「ロックオンのフェニックスの尾がききました。ジャボリー君は蘇生しました。でも重症です。しばらくは絶対安静になるでしょう」 ティエリアは、ソファベッドにジャボリー君をボスっと投げると(絶対安静ならもっと丁寧に扱ったほうがいいんじゃないのか)毛布をかけて、そして手を合わせるとまた南無阿弥陀仏と唱えた。 「いや、生き返ったんじゃないのか」 ロックオンはずっとつっこみたくてうずうずしていたので、ついついつっこんでしまった。 ちなみに、フェニックスの尾とはFFシリーズでキャラクターが死んだ場合蘇生に使うアイテムである。そんなもの、勿論ロックオンは持っていなかったから、適当に使ったといっただけであったが。 「これは重大な事件だ!ジャボテンダー殺人事件だ!犯人をさがさなくては!」 ティエリアの瞳は金色に輝いていた。 「そんな大げさな。ただのイタズラだろ」 「甘い!」 「びでぶ」 ティエリアに思い切り、ロックオンははたかれた。 「ジャボテンダー殺人事件!あるはずのない平穏なトレミーを陥れた恐怖!解決しなければ!」 「とりあえず、現場検証か?」 「そう、現場検証」 ティエリアは虫眼鏡で部屋の中のいたるところをチェックしている。 「あ、その前に死体解剖をしなくては。ドクター・モレノのところにいきますよ」 ジャボリー君、生き返ったじゃなかったのか。 ロックオンの腕を引っ張って、ジャボリー君を抱えてティエリアはドクター・モレノの診察室に出かけた。 現場検証は後だ。 まずは、死因解剖しなくては。 「さぁ、いざ死因解剖へ!」 「がんばー」 トレミーの廊下ではりきるティエリアと、つき従うロックオンを見たアレルヤが、また何かはじまったなと二人を見て、声援をかける。 「ありがとう。ティエリア・アーデはじっちゃんの名にかけてこの事件を解決する」 「だそうだ」 ロックオンの腕を、ティエリアはぐいぐい引っ張っていく。 「面白そうだね。今度まぜてね」 アレルヤは、二人を見て笑っていた。 「そう思うなら代わってくれ!」 「いやだ」 アレルヤは、素に戻って首を振って逃げていった。 NEXT |