「ドクター・モレノ。殺人事件だ」 「なんだと?」 コーヒーを飲みながら、TVを見ていたドクター・モレノが真剣な表情のティエリアに、TVを消して向き直る。だが、ティエリアが横に抱えているジャボリー君を見て、またTVをつけた。 「あ、そう。解決するといいな」 「殺人事件が起きたというのになんて悠長なことを!」 ティエリアは、ジャボリー君をブンと振り上げて、べしべしとドクター・モレノを殴った。 「ちょ、ロックオン、ティエリアなんとかしろ」 「ティエリア、落ち着け」 ロックオンが、ティエリアを抱きすくめて舌が絡むくらいの深いキスをしたあと、衣服の下に手を伸ばす。 「んん・・・・っ」 「まてまて、誰もさかるなとは言ってない」 ドクター・モレノがロックオンの頭をはたいた。診察室用のスリッパで。 「ロ、ロックオン・・・こんなことをしている場合では!ドクター・モレノ、殺人事件だ」 「あーはいはい」 ドクター・モレノは毎回のように、聴診器をティエリアの頭にあてる。 ティエリアのIQは180をこえているが、こんな風に真面目にアホアホなので、ドクター・モレノは本気でティエリアの脳の心配をしていた。 「大丈夫か、ティエリア。ちゃんと薬は飲んでいるか?」 「飲んでいる」 ドクター・モレノはティエリアが無性であるが故におこる体の弊害や、イノベイターであるが故におこることについて、CB全体から任されている。 今は、痛覚に対する神経が鈍いという難問をなくすための薬を処方している。その薬を飲めば、痛覚は普通の人間と同じくらいになる。痛覚が鈍いと病気になったり、戦闘で傷害をおっても気づかない場合がある。過去にそれで、ティエリアは何度か、見た目は大丈夫だったが、実は肋骨を折っていたなんてことがあるので、皆心配しているのだ。そのために、薬を特別に処方されていた。 「ジャボリー君が殺された。死因解剖をしてほしい」 ティエリアが、ジャボリー君を差し出す。 それを受け取って、ドクター・モレノはいつものようにオペ室に入ると、手術台にジャボリー君を乗せた。 「うーん。しまったな。状況を聞き忘れた。どうするか・・・」 ドクター・モレノはジャボリー君を見下ろしながら困り果てた。今更呼び出すと、ティエリアは医者のくせに分からないのかと言い出しそうだ。 オペ室のドアが開き、ドクター・モレノがジャボリー君を右手に持って出てくる。 「分かったのか?」 「分かるもんなのか?」 ロックオンはそう言いつつも、ドクター・モレノとアイコンタクトをしていた。 任せたぜ、大将。おう、任されろ。 そんな無言の会話がされている。 「死因は、フグ中毒だな」 「な・・・・・・・・!フグ中毒!?」 てっきり死因は絞殺と思っていたティエリアは、驚愕に目を見開いた。 「プッ」 ロックオンは、解剖の結果に思わず笑ってしまった。 フグ中毒! ジャボテンダーの死因がフグ中毒!いつフグなんて食べたんだよ!いやそもそも、光合成だけで、ティエリアだってドリンク類しか飲まないとか言ってたのに。ロックオンは、ティエリアがいなかったら笑い転げていただろう。 「な、なんという凄まじい展開だ!これは難事件だ!」 ティエリアは真剣だった。 ジャボリー君を受け取って、ロックオンと手を繋いで一旦部屋に戻る。 「今度は現場検証だ!」 ティエリアはのりのりだった。 NEXT |