ジャボテンダー殺人事件ファイル6







「頼まれただと!?一体誰にだ!」
「それは・・・・・」
ラッセが口ごもる。
「ラッセ、もしかしてターバンにラクガキしたのもラッセか?」
「お、よく分かったな」
ロックオンの言葉に、ラッセが顔をあげる。
ロックオンはラッセをはたいた。
「いててて」
「いらんことするな!お陰でティエリアが傷ついただろうが」
「す、すまん。ミス・スメラギと酒を飲んでいて酔っていたんだ。その時に頼まれた」
本当にすまなさそうにラッセは謝ってきた。ロックオンも、これ以上責める気はなかったので、ラッセを許した。
「やはり、真犯人はミス・スメラギ!!」
ティエリアが、ジャボリー君を抱え直す。

「ジャボリー君の死因はフグ中毒死だった」
「プッ」
ラッセは吹き出した。
真面目な顔で言い放つ、おもしろおかしいティエリアと接する機会が少ないのだ。
ティエリアは汗臭いのが嫌いだ。たえず筋トレをしているラッセは、接する機会がとても少ない。
「じっちゃんの名にかけて、真犯人を捕まえる!」
「ティエリアって、かわいいな」
ラッセも、ティエリアのアホアホなかわいさにやられてしまった。氷の花のような美貌のティエリアは、いつもは冷たいので、ラッセは話しかけることもないが、こうして接してみるとなんともおもしろおかしくかわいいではないか。本当に、あの人物の言っていた通りだ。
「言え、誰に頼まれた!?」
ラッセの首を締め上げるティエリア。
か細く華奢に見えて、けっこう力は強かったりする。
「ティエリア、手を放さないとラッセが話せないぞ」
すでに酸欠で泡をふいていた、ラッセ。
人体の急所を攻めることに誰よりも長けたティエリアは、屈強なラッセの何倍も強いのだ。

「ええと。ヒント。かわいいものが大好きな・・・・」
まるで簡単ななぞなぞのようだ。
「犯人はあなただったのか、ロックオン!」
ティエリアは、ロックオンに向き直る。
「なんでそうなる!?」
「だって、あなたは意外にかわいいものが好きだったりする。僕に縫いぐるみを作って贈ってくれたり・・・」
「それはティエリアを喜ばせたいからだろうが」
「はっ!では、犯人は僕なのか!?僕はかわいいものが好きだ。好きで悪いか。僕が、寝ている間に宇宙フグを釣って、それをジャボリー君に食べさせ、そしてミス・スメラギのところで飲んでラッセにジャボリー君を僕の部屋に吊るすように頼んだ・・・・・ああああ、なんてことだ!」
ティエリアは混乱している。
「はっはっはっはっは」
ラッセは、堪えきれずに笑い転げている。
「ミス・スメラギがティエリアの飲酒を許すわけないだろう」
「む。それもそうだな。まだ僕は未成年だ」
「おのずと、もう犯人はしぼられてるぞ」
ロックオンは、真犯人が誰であるかすでに気づいていた。

このトレミーで、かわいいものが好きで有名なのは、あの人物が一番思い当たる。
しかも、ミス・スメラギと一緒に飲んでいたとなると決定的だ。二十歳を過ぎた相手としか、ミス・スメラギは一緒に飲まない。
ほとんどのトレミーの人間は、今までに会って潔白だと分かってきた。
クリスティナとリヒティは、地上に出かけている。

ミス・スメラギがよく一緒に飲んで、そしてかわいいものが好きな人物。
「ティエリア、ほら、ミス・スメラギと一緒に飲んでかわいいものが大好きな人物っていえばさ」
「そ、そうか!!」
かっと、ティエリアは目を見開いた。
「真犯人が分かった!」
ティエリアとロックオンは、真犯人のところに向かった。



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