時、遡る「ジャボテンダー教」







ちくちくちくちく。
ちくちくちくちく。
ドクターモレノと一緒になって、ロックオンはもげたジャボテンダーの腕を胴体とくっつける作業をしていた。ドクター・モレノがはみだす綿を中に押し込んで、ロックオンが持っていたソーイングセットで緑の糸を針に通して器用に腕と胴体を繋げていく。

「なんでも、CBじゃあ今ジャボテンダーが大流行らしいぞ。ジャボテンダー教なるものも存在するらしい。会員番号まで存在する。開祖はティエリアだそうだ」
「ああ、知ってる」
「このままでいいのか?」
「別に、何かの害になるわけでもないからいいんじゃないのか」
「まぁ、確かにジャボテンダーを買うだけで普段の生活にはなんの支障もないが、ティエリアはちょっとジャボテンダー中毒食になりすぎだな。流石ジャボテンダー教の開祖というべきか。CBの皆に崇められてるっていうか、可愛がられてる」
「いいことだな。昔のティエリアを考えると、想像もつかない」
ちくちくちくちく。
ロックオンはもげた腕と胴体を繋げながら、ドクター・モレノと会話を続ける。
「CBのちょっとしたアイドルだな、ティエリアは。昔はCBでも手を焼いていた存在なのに、あんなに丸くしかも可愛くおまけにアホになってまぁ・・・」

「俺の愛があるからなぁ・・・・」
ドクター・モレノはロックオンのその言葉に、禁煙室なのに煙草を吸いだした。
「ちょ、何煙草なんて吸ってるんだ」
「うっさいわ。青春が終わったおっさんの気持ちが、ラブラブバカップルなお前にわかってたまるか」
「青春まっさかりか俺たちは」
「まぁ、昔、ティエリアはCBの中でもその特殊さ故に投薬実験などのモルモットにされかけていたからな。当時は人権というものもティエリアには存在しなかった。それを救ったのが、ガンダムマイスター候補だった数人の少年だ」
ドクター・モレノの言葉に、ロックオンは怒り出すかといえば、落ち着いてジャボテンダーのもげた腕を繋げる作業を続行した。
「お前のことだから、大声出すと思ったのに。おっさん心外だわ」
「昔のことは、ティエリア本人から聞いた。今のCB代表に感謝してるよ。ティエリアを実の娘のように傍において、ガンダムマイスターとなるべく日を待っていてくれたとかで」
「まぁ、その代表がティエリアの存在を知ったのは、偶然だったがな」
ドクター・モレノは煙草を煙をたちのぼらせる。

「CB代表は、自分の後継者にティエリアを指名したかったようだが。ミス・スメラギがガンダムマイスターになるべく目覚めさせた人工生命体であるからと、拒否したようだ。ちゃんとした人権も与えられて、今では仮だが国籍もちゃんとある」
「あって当たり前だ。ティエリアは人間だ」
「その代表と、今度ティエリアが会う予定になっている。しばらく帰ってこないぞ」
「なんだって」
「俺から、ロックオンのことを話しておこうか?一緒に行動できるように」
「そうしてくれると助かる」
ロックオンは真面目に煙草をふかす藪医者っぽいドクター・モレノに頼んだ。
「よし、できた」
綺麗にジャボテンダーのもげた腕は胴体と繋がっていた。
「包帯巻くか」
ドクター・モレノが腕の付け根の部分に包帯を巻いてくれた。

手術中というランプが消え、ティエリアはまだかまだかと待っていたので、食って掛かるようにジャボテンダーの容態を聞いてきた。
「大丈夫、腕は繋がった」
「良かった」
ティエリアは胸を撫で下ろした。
「じゃあ、再生治療も受けさせてやってくれ。ちゃんと治療カプセルにも入れてやってくれ。ドクター・モレノ、頼む」
頼まれて、仕方ないと特別にジャボテンダーは治療カプセルに入れられた。

「なんだこれは」
「ティエリアのジャボテンダーじゃないの?」
刹那とアレルヤは、治療カプセルに寝かせられたジャボテンダーを興味深そうに見ていた。


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